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【連載】被爆(ひばく)についての考え方 Vol.1「被曝とは?」

こんにちは、放射線技師として活動している高石です。

このコラムでは、医療現場の視点からちょっとした疑問や事柄についてピックアップしてお届けしていきたいと思います。

今回は、放射線技師として活動している中で最も密接な関わりのある放射線から、被曝についてお話ししていきたいと思います。

皆さまは「被曝(ひばく)」と聞くとどのような印象をお持ちでしょうか?

多くの方は怖い、体に良くない、よくわからないなど良い印象をお持ちではないと思います。

被曝(ひばく)とはなんでしょうか?

被曝(ひばく)とは人体が放射線をあびることをいいます。

放射線は、様々な場所に存在し利用されています。

最も身近なところでは、病院の放射線検査です。

放射線は医療においてなくてはならない存在ですが、福島第一原発の事故後、

さらに放射線の人体への影響が大きな関心を呼んでおり、事故後はこのような診断・治療目的の放射線による被曝=医療被曝(いりょうひばく)に対する関心が高まっています。

では、皆さんは被曝(ひばく)についてどのくらい知っていますか?

それでは、ここから被曝(ひばく)に関して具体的にお話ししたいと思います。

被曝するとどうなるの?

被曝すると人体にどのような作用を起こし、どのような影響を及ぼすのでしょうか?

放射線は医療において、ほとんどの場合人体の各臓器や筋肉や骨に対するX線の透過率の違いを利用して体内の写真を撮り、病気の診断や治療に役立てています。

放射線には透過作用・電離作用・感光作用・蛍光作用という3つの作用があり、それらを利用して検査を行っています。

それぞれどのようなものかというと・・・。

  • 透過作用:放射線が物質を透過する性質。放射線検査で利用しています。
  • 電離作用:放射線が人体を通過する際、電離作用により細胞内のDNAに損傷を与え、細胞死を起こすことがある性質。主に放射線治療で利用しています。
  • 感光作用:放射線が物質を感光させる性質。放射線検査で利用しています
  • 蛍光作用:放射線が蛍光物質に当たると光を発生させる性質。放射線検査で利用しています。この中では、電離作用と呼ばれる作用が、放射線被曝(ひばく)によって人体に影響を与えてしまうのです。

放射線の電離作用が人体にもたらす影響とは・・・

放射線の電離作用が人体にもたらす影響図

電離作用は遺伝子レベルで作用します。

人体が放射線をあびると、放射線は遺伝子レベル(DNA)で損傷を引き起こします。

多くの場合、傷ついたDNAは短時間で修復機構にて修復されます。修復されれば人体に影響はありません。

修復能力を上回る損傷を受け、修復に失敗した場合に限って、DNAの修復ができないため細胞は、死に排除されます。(放射線治療に利用されています。)

この仕組みを利用しているのが、癌の放射線治療の事でわかりやすいかと思います。

正常な細胞が少なくなることで、その組織や臓器の機能が一時的に衰え、脱毛・皮膚障害・造血障害などの臨床症状が出ることがあります。(放射線治療後に、患者様が体験する副作用による症状です。)

その後、正常な細胞が増殖すれば症状は回復します。

また、稀に損傷を受けたDNAが修復する過程で、不完全に修復されその細胞に突然変異が起ることがあります。

突然変異した細胞のほとんどは、また修復されたり排除されたりします。

しかし、まれに一部の変異細胞が排除されず生き残り、増殖することでがん細胞となることがあります。

このように人体が放射線をあびる(=被曝(ひばく))と遺伝子との電離作用で、人体に害を及ぼす可能性があります。

放射線を被曝する量が多いほど、傷つく細胞が増えるので、放射線を被曝する量が多いほど人体への被害は大きくなります。

ここで皆さんが気になるのが、身近な被曝(ひばく)である病院での放射線検査だと思います。病院での放射線検査はどうでしょうか?

診断・治療目的の放射線による被曝(=医療被曝)では、放射線の量を管理しており、放射線量を少なくしています。

そのため、放射線を浴びても傷つく細胞は少なく、ほとんどの場合細胞は修復されます。もし修復が不完全で突然変異したとしてもほとんどの場合で排除されます。

そのため、診断・治療目的の放射線による害はほぼありません。

主治医に放射線検査が必要だと言われたら安心して検査を受けてください。

今回は被曝(ひばく)についてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?

次回は、被曝による人体への影響について詳しくご紹介したいと思います。