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【連載】被爆(ひばく)についての考え方 Vol.2「被曝と人体への影響について」

こんにちは、放射線技師として活動している高石です。

シリーズ初回では、被曝とは?をテーマに、放射線をあびて被曝すると人体と遺伝子レベルで電離作用を起こし、人体に害を及ぼす可能性についてご紹介させていただきました。

では、放射線被曝をするとどのような害が出現するのでしょう?

今回は放射線被曝と健康被害とも言える「被曝と人体への影響について」についてご紹介したいと思います。

遺伝的影響と身体的影響について

放射線の影響は遺伝的影響と身体的影響の2つに分類されます。

遺伝的影響とは、生殖腺に受けた放射線の影響により、遺伝子に突然変異をきたし子孫に遺伝的疾患が発生することをいい、動物実験で発見されています。ただし、人については、広島・長崎の原爆被爆者二世を対象とした調査では確認がされていません。

このような歴史的経緯により、人への遺伝性影響のリスクは高くないことが分かってきました。

身体的影響は、被曝した影響がその人に現れることをいい、さらに2種類に分けられます。

一つは、ある一定量の放射線量を超えると症状が出現する確定的影響で、、もう一つは、細胞の修復時に突然変異を起こしがん細胞となる確率的影響です。

確定的影響とは、「一定量の放射線を受けると、影響が現れる」現象をいい、その一定の線量を「しきい線量」といいます。

また、受けた放射線の量が多くなるほど、その影響度(障害)も大きくなります。

確定的影響では、数多くの細胞が放射線によって傷ついた時、人体の修復機構にて修復されます。

しかし修復機構にて修復できない場合は排除され一時的に正常な細胞が少なくなり、その組織や臓器の機能が一時的に衰え、脱毛・白内障・皮膚障害・造血障害などの臨床症状が出現します。その後、正常な細胞が増殖すれば症状は回復します。

どのようなものがあるかというと

以下の図のようにあげられます。

この中で、最も低い線量で生じる可能性があるのは、しきい線量100mGyの男性の精子数が一時的に減少する一時的不妊と妊娠初期の被曝による流産・形態異常です。

次に500mGyの被ばくをすると、白内障や白血球の減少が出現します。

この確定的影響は、しきい線量を超えなければ出現しませんので被曝量をしきい線量以下に抑えることで防ぐことができます。

放射線検査で一般的に被曝する線量は撮影部位で異なりますが、

レントゲンで約0.06mGy~9.0mGy

CTで約5mGy~30mGy(体格が大きい方や肥満の方の場合は最大80mGy)です。

通常の医療で使用される放射線量は肥満の方でより多くの放射線量を使用したとしても確定的影響を受ける最小のしきい値より低い値になっていますので確定的影響の発生を心配する必要はほとんどありません。

続いて、確率的影響についてご説明します。

確率的影響とは、確定的影響のようなしきい値がなく、低い線量(100mGy以下:低線量被曝)でもその影響はゼロにはならないと考えられており、放射線を受けた線量に比例して影響が現れる確率が増えると考えられています。

しかし、通常の放射線検査よりも高い線量(100mGy以上:高線量被曝)の放射線をあびた場合、線量とその影響に直線的な比例関係が認められますが、それ以下の通常の放射線検査である低線量被曝では科学的に証明されていません。

確率的影響には、がんや遺伝的影響があり、放射線により遺伝物質のDNAに損傷が起こると、大多数は修復されます。

稀にその損傷の修復に失敗して、突然変異や細胞のがん化に結び付く可能性があると考えられています。

低線量被曝の場合には、その確率はがんや遺伝的影響の自然発生率または、日常生活のリスク(喫煙や他の化学物質による発がん)に比較してかなり低く、がんや遺伝的影響の発生を心配する必要はほとんどありません。

このように被曝における人体への影響は線量が多いほどその影響も強く出現します。

一般的に医療で使われる放射線は100mGy以下の低線量になりますので確定的影響は出現しません。

一般的な医療検査で影響が出現する可能性を考えるならば確率的影響になります。

確率的影響、つまりがんですが、100mGyで発生率は0.5%上昇すると言われています。

100mGy以下であれば、他のリスクに埋もれてしまい、明らかながん発生率の上昇は科学的に証明されていません。

放射線防護上影響があるものとして直線的な関係があると考えられます(点線部位)。

現在日本人の3人に1人ががんで亡くなられています。がんの原因の大部分は喫煙や食生活といった生活習慣が占めています。

医療被曝によるがんのリスクは、自然放射線(日常生活であびる放射線:自然界にもともと存在する放射線[日本の自然放射線被曝量は年間2.1mGy])やコーヒーとほぼ同等で、無視できるほど小さいと言われています。

がんに対する放射線のリスクは高く思われがちですが、他のがんのリスクと比較しても低線量である医療被曝によるがんのリスクは特別高いわけではありません。

日常生活のリスクと比べても、喫煙や肥満の方がはるかに高いリスクを持っているのです。

また、”医療における放射線被曝によってがんのリスクが増加する”を仮定した場合でも、その増加分は他の原因によるがんリスクと比べて非常に小さいと考えられています。

今回は放射線被曝による人体への影響についてご紹介しましたがいかがだったでしょうか?

次回は妊娠と被曝についてご紹介させていただきます。