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【連載】被爆(ひばく)についての考え方 Vol.4「小児の放射線検査」

こんにちは、放射線技師として活動している高石です。

連載でお届けしている放射線シリーズ。

さっそくですが、お子さんがいる家庭では子供への放射線の影響がどうなのか気になるところだと思います。

今回は「小児に放射線被曝がもたらす影響」についてお話します。

小児の放射線の影響も確定的影響確率的影響があります。 

小児の確定的影響

子どもは大人に比べて感受性が高く、細胞分裂が活発で新陳代謝が激しいので、放射線の影響を受けやすいといわれます。

感受性が高いので確定的影響のしきい値も低いと考えられますが、子どもの細胞と大人の細胞とではDNAの修復能力が、どのように異なるかについての研究は、ほとんどされておらず、小児の放射線被曝における確定的影響のしきい値について明らかなデータはありません。

しかし、小児の体格は、大人よりも小さく放射線検査を行う場合、線量を低くして撮影します。

同じ放射線検査においても、小児の検査の方が放射線線量は約半分かそれ以下の線量になります。小児の一般的な放射線検査では体格が大きくても30~50mGyです。

小児へ通常の医療で使用される放射線量は、一般的な確定的影響を受ける最小のしきい値より低い値のため、確定的影響の発生を心配する必要はほとんどありません。

小児の確率的影響

小児の被曝で問題視されているのが確率的影響です。

小児の場合は、放射線被ばくに伴う発がんリスクを高めるという意味です。。

小児は、感受性が高く、、放射線を被曝したあとの余命が長いことから言われています。

以下は環境省から出ているデータです。

原爆被爆者の疫学調査で得られたデータに基づき、がんによる死亡のリスクを生涯リスクとして表したものです。(シーベルトSvとGyは放射線の種類によって値が変わりますが、医療で使われる放射線では、Sv=Gyです。)

急性被曝100mGy当たりのがん死亡と白血病による死亡の生涯リスクを、急性被曝の無い場合とそれぞれの死亡リスクと比較しています。

これを見ると10歳の男子は、将来30%の確率でがんにより死亡する可能性があるところ(被曝がない時のがん死亡リスク30%)、急性被ばくとして100mGyを被ばくすると、被ばくによるがん死亡が2.1%増加し、あわせて32.1%のがん死亡のリスクになることを意味しています。100mGy当たりの白血病の死亡リスクでは被曝していないと1%で、100mGyを被曝すると1.06%になります。

100mGyを急性被曝した場合、被曝時の年齢が低いほど生涯のがんによる死亡のリスクが高い傾向にあるということです。若年者のほうが将来がん細胞に進展する可能性を持つ幹細胞の数や細胞分裂をくり返す頻度が高年齢者と比較して多いことなどがあげられます。

しかし、100mGy以下の被曝では小児の感受性が高いとされていても小児の被曝の確率的影響はその他の日常のリスクに隠れて確認できません。

一般の医療における放射線検査では大人でも100mGyを超える被曝はほぼありませんし、小児の体格に応じて線量を減らして検査を行っていますので同じ放射線検査でも小児の検査の方が放射線線量は約半分かそれ以下の線量になります。

だからと言って一般の医療における放射線検査をどんどんしてよいというわけではありません。

100mGy以下の被曝はその他の日常のリスクに隠れて確認できていないということは裏返せばどのような影響が出るか確認できていないので、できるだけ被曝はしないことが望ましいと言えます。

しかし、それでも大半の小児は、うまく自分で症状を伝えることができないため画像検査を行い、身体への異常がないか検査する必要があります。

その際は、放射線を被曝するリスクと、検査を施行せずに病気を見逃すリスクを考えることが必要です。

一般的な放射線検査で被曝するリスクは、確認できないほど小さいのに対して、検査を施行せずに病気を見逃すリスクは未知数です。どちらがいいでしょうか?

小児の場合は被曝をすると将来がんになる可能性が高くなると言われていますが、一方で、必要な検査を施行しない選択の方が、将来に及ぼす影響が大きくなる可能性があります。

主治医と相談し、必要だと思う放射線検査があればよく検討した上で受けることが良いのではないでしょうか。

正当化

このようなリスクの考え方は、成人も同様です。このことを正当化といいます。放射線検査を受けるならこの正当化をしっかり行いましょう。

仮に、CT検査を受けるなら、CTの適応の正当化(なぜCTの検査が必要なのか)をきちんと理解することが重要です。

MRIや超音波検査のような被曝のない検査に置き換えて検査を行うのも正当化ですが、CTやレントゲンでしか評価できないものもあります。

被曝を怖れるあまり必要なCTやレントゲン検査を行わないのは、病気を見逃すリスクが高まります。したがって、CT、MRI、超音波などの画像検査について専門の医師や主治医とよく話し合って必要最低限の被曝で最適な検査を行うことが望ましいと言えます。

いかがでしたでしょうか?

次回は我々放射線検査の最適化について我々放射線技師が行っていることをご紹介したいと思います。