ウェブラジエーション勉強会 第4弾 ‐tree-in-bud sign‐

放射線技師の高石です。

第7回ウェブラジエーション勉強会へご参加いただきました皆さま、誠にありがとうございました。

今回のダイジェスト版は、第4弾目「tree-in-bud sign」についてご紹介していきたいと思います。

放射線技師の皆様は、もしかしたら、日頃の業務で遭遇するかもしれない症例だと思います。

ぜひ最後までご覧ください。

症例

86 歳代 女性

右股関節痛で救急搬送された方です。

レントゲン撮影にて右股関節頸部骨折と診断され、入院となったため胸部レントゲン写真を撮影を行いました。

胸部レントゲン画像がこちらになります。

右:胸部X線画像 左:白黒反転画像

何か異常を指摘できますでしょうか?

右の上肺野に濃度上昇(白く写っている)があるように見えます。

よって胸部CT検査がオーダーされました。

CTの画像がこちらになります。

上肺野の軟部条件の画像です。

 

こちらに(赤枠)空洞を伴う腫瘤性病変があることがわかります。

こちらの患者さんは、股関節頸部骨折で入院のため、股関節も同時撮影をされました。

MPR作成や3D作成などにおわれ、しっかりとスクリーニング画像を確認できておらず、撮影当時にこの空洞を伴う腫瘤性病変に気づくことができませんでした。

そのため、いつものように検査が終了し、入院する病棟に行ってもらおうとしたときに読影医から連絡がありました。

なぜ連絡があったのか?

空洞を伴う腫瘤性病変は活動性の高い結核が疑われます。

もし結核であったなら、陰圧感染室にて隔離や患者本人にマスク着用を指示したり、対応する職員はN95マスクを装着するなどの対応が必要となるからです。

結核の特徴的な画像所見

結核菌は、気管支に散布され気道を埋めるよう伸展していき、気管支の末梢である細気管支や肺胞が核となる肉芽腫により充満します。結核という言葉はこの核を結するという語源もこれから来ているようです。

肺気管支が減退化し、その周囲に境界明瞭な高コントラスト(肺野条件)の粒の小さな病変がみられます。

これが、木が枝分かれして蕾をつけているように見えることから「tree-in-bud(木の芽) sign」と呼ばれます。※bud:蕾み

これは、結核の活動性が高い病変として重要な指標と言われています。

このtree-in-bud signは、気管支炎や慢性細気管支炎でもみられますが、この粒が小さくて明瞭であるのが結核の特徴と言われています。

また、空洞を伴う腫瘤性病変も特徴的な所見です。

より広範囲に肉芽腫が充満し凝固壊死を起こし、中心部に空洞を形成したものを反映した画像になります。

空洞ができればそこに結核菌が増殖し、結核菌を散布する原因となります。

空洞のサイズや、壁が肥厚しているほど排菌のリスクが高いと言われています。

1次結核・2次結核

肺結核は、初感染から発病に至る経過により1次結核、2次結核に分けられます。

1次結核:感染後早期に発病するもので、感染した結核菌の量が多い時や免疫力が低下している人や小児などが発症。

2次結核:長期間経過して発病するもので、感染したが免疫力が高く発病せずに潜伏し、免疫力が弱った時に発症、感染より数年たってから発症。

酸素分圧が高く、リンパ流が少なく、肺尖部に多く、空洞を伴う腫瘤性病変を形成する。

1次結核よりも2次結核が多いと言われています。(1次結核<2次結核)

今回の症例も肺尖部に空洞を伴う腫瘤性病変とtree-in-bud signを認め、2次結核の可能性が高いと考えられました。

胸部単純CTの肺野条件であれば、このようにはっきりとしたree-in-bud signが確認できるのですが、当院の装置では検査を終了しないと肺野条件の再構成が作られないので、スクリーニング画像で気づかなければならない症例でした。

患者さんは検査後にすぐ他院へ紹介されました。

数日後、返書(紹介先病院からの返答)がありました。

他院からの一部報告書内容について

肺結核の治療が望ましいということで、結核の治療が行える病院へと転院となりました。

「 結核かもしれない:これが重要 」

1.肺結核CT画像の特徴を知る
 ・粒が小さく明瞭な小葉中心性の粒状影

  ・tree-in-bud appearance

   →気管支肺炎のパターン

  ・空洞形成

  →さらに排菌と強く関与する

2.肺結核を疑ったときの対応

 ・マスク対応の確認

 ・患者さんはそのまま検査室内で待っていただく

 ・放射線科医に画像をチェックしてもらう

 ・主治医や外来・救急外来などへ連絡を取る

対応について

まずは、マスクをしているか確認すること。

患者さんには飛沫を捉え、飛沫核を生じさせないようにサージカルマスクを着用していただく。

医療スタッフには飛沫核を吸入しないようにN95マスクをつけることが望まれます。

放射線科医もしくは主治医に連絡する。

病棟へ連絡し、個室への移動などの対応を行ってもらう。

検査後は検査室の換気や清拭が求められます。

~take home masseages~

忙しい時でもスクリーニング画像の確認が大切です。

空洞とtree-in-bud signの画像所見を頭に入れておく。

結核患者の対応についてもう一度振り返ってみてはいかがでしょうか。

放射線科医より

結核は過去の病気と思われがちですが、最近増えてきています。再興感染症といわれ、一時期は減少していたが再び注目されるようになった感染症に対する総称です。

ここ数年、結核の患者さんが増えていまして今回みたいに高齢の方の再発もあるのですが、若い外国からこられた方の活動性結核の方が多くなっています。

特に発展途上国から来られた方は結核菌の保有者が多いことと、寮に入って集団生活をされているので、寮の中で結核が蔓延してしまうことがよくあります。

また交通外傷や労災で病院に運ばれたら結核もあったり、整形外科の患者さんでも遭遇することが増えてきています。

今後、活動性の高い結核とであった時のどう対応したらよいか悩むところかなと思います。

読影医の方からはこのような症例を見つけた場合は、感染対策を行うように連絡がすぐにできればと思います。

tree-in-bud signは結核だけでなく、頻度が多い慢性細気管支炎も似たような画像所見になります。

慢性細気管支炎とどのように区別するのかというと、結核の方が1個1個の粒が「ベタッ」とした画像になります。

慢性細気管支炎の場合は粒状影の周囲にすりガラス影が目立ち、ぼやけた画像になります。

今回の症例のように1個1個の粒がベタベタしたような画像になるとより結核が疑われるのでワンランク注意して対応したらよいかと思います。

画像上区別がつかないのが非結核性抗酸菌(NTM)です。

これに関しては画像だけでは判断がつきにくいです。

どちらにせよ感染対応が必要ですので、連絡することが大切です。

まずは、放射線技師サイドからは放射線科医に連絡し、判断を仰ぐのが良いのかと思います。

放射線科にいない場合は、放射線技師が結核の画像の特徴を理解し、主治医に報告し適切な対応をすることが望まれます。

非結核性抗酸菌:NTM症とは

非結核性抗酸菌(non-tuberculousis mycobacteria: NTM)とは、結核菌群とらい菌を除いた抗酸菌の総称であり、約200種類が存在します。これによる感染症をNTM感染症といいます。

非結核性抗酸菌症(NTM感染症)は、抗酸菌の中でも結核属以外が感染を起こす病気で、主に肺や皮膚に感染を引き起こし、NTMによる肺感染症のことを肺非結核性抗酸菌症(肺NTM症)といいます。また、人に感染するNTMの9割がMAC菌と呼ばれるもので、MAC菌による肺感染を肺MAC症ともいいます。

非結核性抗酸菌は水や土壌などの自然環境に広く分布しており、通常は吸い込んでも病気になることはありませんが、稀に一部の人で肺に定着し肺NTM症を発症します。

発症する原因は不明ですが、結核とは違い、ヒトからヒトに感染しない特徴があります。

中高年のやせ型の女性や肺疾患や関節リウマチを抱えている方がかかりやすいと言われています。

参考資料:看護roo! ガス交換の仕組みhttps://www.kango-roo.com/learning/8189/

以上、【ダイジェスト版】第7回ウェブラジエーション勉強会 tree-in-bud signの紹介でした。次回は、腹部反跳痛についてです。お楽しみに。