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バリウムで腸に穴があく?!〜胃がん検診のリスク〜

皆さんこんにちは。

ラジエーションジャーナル編集部の林です。

国が推奨している胃がん検診の一つ、バリウム検査(バリウムを用いたX線検査)。

これは、X線透視装置を使用した検査で、胃の状態を診断するために、国内では広く用いられていますが、稀に重大な合併症が発生することがあると言われています。

その一つが消化管穿孔(腸などの消化器が破れること)です。

非常に危険で、緊急処置が必要になります。

今回は、このバリウム検査のリスクについて、最近耳にした内容を含めてご紹介したいと思います。

バリウム検査の概要

バリウム検査は、消化管(食道、胃、十二指腸、小腸、大腸)を評価するためのX線検査です。

この検査では、バリウム硫酸塩という造影剤を使用します。

投与方法としては二つ、口からの飲用する方法と直腸から注入する方法です。

バリウムはX線を通さないため、消化管の輪郭を鮮明に映し出します。歴史は古く1960年代から始まったとされており、現在でも胃がん検診といえばバリウム検査が主流となっています。

日本対がん協会の報告では、2021年度自治体などが依頼し実施した集団胃がん検診は約170万人、そのうちバリウム検査は約163万人で圧倒的に多いといわれています。

リスク

・誤嚥 : バリウムが気管に入ってしまう「バリウム誤嚥」。毎年1000件前後が発生しています。肺にバリウムが入り込み呼吸困難や感染性肺炎、アナフィラキシーショックなどが起きます。しかも肺の中でバリウムが固まるため除去は困難であり、長期間滞留するケースもあるという。

・腸閉塞、消化管穿孔 : 腸に既に潰瘍、炎症、腫瘍、または他の病変がある場合、バリウムの圧力や動きで腸壁が弱くなり、穿孔のリスクが増加します。また直腸注入法であるバリウム浣腸を用いた大腸検査では、バリウムの量や圧力が高くなることがあり、腸壁に過度な負担がかかり穿孔する場合がある。

消化管穿孔の症状と対策

症状:急性腹痛、発熱、吐き気・嘔吐、腹部の膨満感、便秘または下痢

対策と治療

・緊急処置: 腸穿孔が疑われる場合は、速やかに医療機関での評価と治療が必要です。穿孔が確認された場合、通常は緊急手術が必要です。

・抗生物質: 感染のリスクが高いため、抗生物質の投与が行われます。

・絶食: 腸の負担を減らすために、一定期間の絶食が指示されることがあります。

予防策

  1. 事前の評価:バリウム検査を行う前に、患者の病歴や既存の消化器疾患を十分に評価し、リスクを確認
  2. 慎重な検査施行:経験豊富な医療スタッフが適切な技術で検査を行い、無理な力を加えないように注意
  3. 代替検査:高リスクの患者には、CTスキャンや内視鏡検査など、バリウム検査以外の診断方法を検討

バリウム検査は、胃がんの早期発見に有用な診断ツールですが、上記に記載したように腸穿孔などのリスクは完全には排除できません。

厚労省の関連組織であるPMDA(医薬品医療機器総合機構)の報告では2014年度の1年間で75例、バリウム製剤による腸閉塞や穿孔が報告されています。

バリウム製剤による副作用や胃がん診断率関連の問題(胃透視検査では所見の見落としが多くある)などで、国立がん研究センターの検診研究部は、2015年から胃がん検診に内視鏡(胃カメラ検査)を推奨しているようですが、現在でも集団検診は圧倒的にバリウム検査が多いのが現状です。

バリウム検査は、危険が多いのでやめた方がいいと断言はできませんが、検査前にリスクを理解し、適切な予防策などを講じることが非常に大切です。

近い将来、胃がん検査のメインがバリウム検査から胃カメラ検査に移行していくかもしれませんね。(実際に2015年から国立がん研究センター検診研究部は、胃がん検診には内視鏡を使用した検査を推奨している)

今回もこの記事が皆さまのお役に立てば幸いです。