骨密度とTBSに関する最新の知見|骨の「強度」の評価について

放射線技師として活動している高石です。

先日、私が勤めている病院で骨密度検査装置が新しいものとなりTBSというものが評価できるようになりました。

皆さんはこのTBSというものをご存じでしょうか?

このTBSとは海綿骨構造指標(Trabecular Bone Score :TBS)と言われるもので従来の骨密度評価を補足する指標となります。

今回は昨今、学会等でも話題を集めている海綿骨構造指標(Trabecular Bone Score :TBS)についてご紹介させていただきます。

TBSとは?

TBSは海綿骨構造の指標として用いられ、Medimaps Group社(スイス)が開発したソフトウェアで、X線骨密度測定装置で計測された腰椎画像の画素濃度をテクスチャー解析して算出される指標です。

従来の骨密度測定は、骨の健康状態を評価するための重要な指標になりますが、骨の強度を完全には反映していません。そこで、TBSが注目されました。

TBSは、骨密度測定装置で得られた腰椎画像の画素濃度変動を解析することで、骨の微細構造を評価することができ、骨密度とは独立した危険因子として、骨折リスクの評価に役立つとされています。

骨強度に及ぼす骨密度と骨質の関係

骨粗鬆症の定義は「骨強度の低下を特徴とし、骨折のリスクが増大しやすくなる骨格疾患」とされています。骨強度は、骨密度(70%)と骨質(30%)によって決められます。

骨質については、骨微細構造、骨代謝回転、微細骨折、石灰化などで規定され、①構造学的な骨質(海綿骨の骨梁低下や皮質骨の多孔化)と②材質的な骨室(コラーゲンの劣化)に分けられます。

骨密度はDXA法で評価することができ、骨質をTBSで評価することができます。

TBS(海綿骨構造指標)による骨室の評価

TBSで海綿骨の微細構造を計測することで、構造的な骨質に関する情報を得ることができます。これは従来の骨密度検査(DXA)の画像から算出することが可能で、従来の骨密度測定に付加情報として提供し、日常診療においても簡便に行うことができるため臨床現場での利用が進んでいます。ただし材質的な骨質の評価はできません。

骨密度検査画像の輝度の違いを構造的な変動として解析しており、骨の質が悪いほどTBSが低く算出されます。

同じ骨密度でもTBSが低いと骨強度としては低いということになります。

TBSとは骨微細構造の関連については軽微な相関に限られることや直接的に継続した指標ではないことなど注意は必要ですが、骨折を予防する指標であることが示されています。

TBSの活用

従来の骨密度であれば下の図のように正常・骨量減少・骨粗鬆症の三段階での評価でした。

これにTBSを活用することによって下の図のように7段階での評価を行うことができます。

TBSと新規椎体骨折の発生には、骨密度と独立した有意な関連があり、組み合わせた時の骨折リスクの予測精度は骨密度単独の場合より向上することも報告され、骨密度が骨粗鬆症でTBSが低値の場合は、著しく椎体骨折率が増加するという報告がされています。

また、同じ骨密度でもTBSが低値の場合はTBSが低値の方が椎体骨折をしやすく、骨密度が正常でもTBSが低値の場合は椎体骨折をしやすくなるので注意が必要です。

検査結果データ集計

私が勤める病院での検査結果を集計してみました。

骨粗鬆症疑いで検査に来られる方がほとんどですので、骨密度が骨粗鬆症の方が多いのですが、骨粗鬆症の中でもTBSが低値を示す方が21.4%、TBSが中値を示す方が28.9%、TBSが高値を示す方が24.3%となりました。

骨密度で骨粗鬆症となった方の中で、TBS値が低値である3割の方は特に骨折しやすいので注意が必要になります。

中には骨密度が正常となった方でTBSが低値を示している方が0.2%の割合でありました。これは骨密度が骨量減少でTBSが高値の方の椎体骨折リスクと同程度になります。

このようにTBSとあわせて評価することで骨折リスクの予測精度が向上し骨密度だけではわからなかった椎体骨折リスクを評価できるようになります。

今回はTBSという骨質の評価方法についてご紹介させていただきました。骨折リスクには骨密度低下の方が影響としては強いですが骨質も関係しています。

骨密度とTBSに関するさらなる情報や、骨粗鬆症の診断と治療についての詳細は、専門の医療機関や医療専門家にご相談ください。

骨の健康は、生涯にわたる活動的な生活を送るための基盤となります。定期的な検査と適切なケアで、健康な骨を維持しましょう。