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がんばれ!高校球児 〜投球障害から選手を守ろう〜

こんにちは。ラジエーションジャーナル編集部の林です。

甲子園、開幕しましたね。今年は甲子園球場会場100周年という記念すべき大会となっています。高校生の一球にかけたプレーは、毎年観る人に勇気と感動を与えてくれますが、今年は記念大会とのことで例年にもまして白熱した戦いを繰り広げて欲しいものです。

高校球児はもちろん、野球少年の抱える怪我の悩みの一つとして「野球肩」があります。

元高校球児である私も昔、この肩の痛みに悩まされた時期がありました。また肩の痛みが改善せず、野球をやめてしまった友人や後輩も複数いたのも事実です。五十肩のような一般成人の疼痛症状や原因とは、どう違うのかなど今回は、この「野球肩」について記事にしてみました。

野球肩について

野球で肩を痛める「野球肩」の原因のほとんどは、”肩の使いすぎ”(オーバーユース)によるものです。投球動作の繰り返しにより肩関節に過剰なストレスがかかり、炎症や損傷が生じます。投球時の痛みから始まり、その後悪化すると投球だけでなくバッティング時やその他日常生活でも痛みが出現するようになります。画像診断が有用である「野球肩」の原因をいくつか下記に紹介します。

上腕骨骨端線離開

成長期の選手に多発する投球障害のため、リトルリーグショルダーとも呼ばれます。成長期の骨は大人に比べて強度が低いため、オーバーユースにより上腕骨の骨端線(成長線)に離開が生じます。主な症状は、投球直後の鋭い痛みです。放っておくと、成長障害が起こる可能性があります。

腱板損傷

肩関節と腱板が衝突を繰り返して出現します。腱板とは、棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の4つの筋肉の腱の部分が上腕骨頭で集合した部位を指します。過剰な肩の回旋運動によって生じると言われており、痛みで腕が挙上できなくなったり、夜間痛が出現し眠れなくなったりします。

インピンジメント症候群

腱板や肩峰下滑液包が上腕骨頭や肩峰、烏口突起などに衝突を繰り返して、炎症や損傷を起こす症状です。野球以外にもテニスなど、肩よりも腕を高く上げる動作が繰り返されることで発症します。肩を上げていくときに、ある一定の角度(70〜120°あたり)で痛みや引っ掛かりを感じ、それ以上腕を上げられなくなるのが特徴です。

SLAP(上方関節唇)損傷

関節唇(上腕骨骨頭と肩甲骨関節窩間の関節軟骨の一部)が損傷することで痛みが生じます。ボールを投げる時に、関節唇上部の付着している上腕二頭筋長頭腱が引っ張られたり、捻じれの力が加わったりする動作の繰り返しにより、関節唇の損傷を引き起こします。肩甲帯や胸郭の動きが硬い人に多いです。

肩甲上神経損傷

棘下筋を支配している肩甲上神経が、投球のフォロースルーのような動作のときに引っ張られ、圧迫されることで損傷します。野球の投球時の他、テニスのサーブやスマッシュ、バレーボールのスパイクなどでも出現します。症状としては肩の外側後方に放散型の疼痛。また背中を見て肩甲骨の山が目立つようになり、肩全体に疲労感が出現すると言われています。

動揺肩、動揺性肩関節症

肩関節が多方向の不安定性を生じて、異常に緩くなってしまう状態のことを言い、ルーズショルダーとも言われます。この障害では投球動作中にバランスを崩して肩関節周囲の組織を損傷するなど、大きな外力がかかっていない場合でも微小な外傷によって、疼きや痛み、不快感、脱力感を訴えるようになります。スポーツ選手以外でも、一般的には肩関節の安定化に関わっている上腕骨と肩甲骨の間にある靭帯や関節包が先天的に緩い人に起こりやすく、遺伝性もあると言われています。投球時に痛みが出現したり、肩の不安定感や脱力感を伴うこともあります。また、投球時のフォロースルーの際に、肩が抜けるように感じることもあります。

上記に記載したように、野球をする若者が肩を痛める一番の理由は、肩の使いすぎです。現在では若い選手の肩・肘を守るために投球制限が設けられています。例えば少年野球の場合、1日70球で制限されることが多いです。 4年生や5年生の場合は、この球数が60球、50球となることもあります。

私自身も過去に約10年間野球をしていましたし、現在では9歳の息子が野球をしています。選手の健康を守り、長期的な成長を遂げるためには投球制限のルールは非常に重要だと考えます。正しいルールの下でプレーすることで、選手たちがより安全に、そして楽しく野球を続けることを願ってます。また規則だけでなく、コーチや保護者、選手自身が協力し合い、適切なプレー環境を作ることも大切ですね。

ご拝読有難うございました。

参考:学童野球に関する投球数制限のガイドライン 公益財団法人 全日本軟式野球連盟

https://www.jsbb.or.jp/uploads/6b2771c3abc34142f10f2d769d38633c.pdf