放射線技師として活動している高石です。

画像レッスンとはあらゆる画像をみながら、見落としてしまいそうな症例や画像からみられる診断についてを学んでいただく放射線技師・医師やそれを目指す人たちへのまなびの「場」です。

皆さん、「shin splints(シンスプリント)」という言葉を耳にしたことはありますでしょうか?

shin splints(シンスプリント)」は日本語では脛骨過労性骨膜炎と呼ばれています。

言葉自体は、脛(shin)の部分に痛みが走る(splints)という意味合いがあり、1982年にMubarakによって命名されました。

このシンスプリントは名前の通り脛骨の骨膜炎を指します。

症状

脛骨に沿ってうずくような鈍痛で始まり、運動時に最も強く現れることが特徴です。痛みは筋肉が骨に付着するラインに沿って起こり、運動を続けると筋肉がほぐれ、一時的に痛みは解消することが多いですが、症状が進むと日常生活にも影響を及ぼすようになります。前脛骨筋・後脛骨筋・長母趾屈筋・長趾屈筋・ヒラメ筋の付着部(脛骨内側)が脛骨の表面を覆う骨膜を牽引して微細損傷(骨膜炎)をきたし、下腿内側の痛みを発生させます。
下腿中央〜遠位1/3部の圧痛、運動時痛、腫張が主症状で、足屈筋の抵抗運動で痛みは増強します。治療をせずにそのまま運動を続けるとさらに疲労骨折を合併します。

特にランナーやバスケットボール、サッカーなどのダッシュやジャンプをするスポーツ選手に多く見られ、激しいスポーツを行う成長期から青年期にかけての男性に好発します。

シンスプリントの診断には通常では詳細な症状の確認と触診が行われますが、症状の進行度合いを見るためにも画像診断が有用になります。

画像診断

レントゲン(X線撮影)、MRI、超音波などが利用されます。
レントゲン検査では、疲労骨折を除いて異常所見が少ないため、超音波検査やMRIがより詳細な情報を提供でき、骨膜や骨髄の状態を評価するのに適しています。
特にMRIは、骨膜の腫脹や骨髄の状態を段階的に評価することができ、シンスプリントの進行度を判断するのに役立ちます。
また、最近では超音波検査でも骨の表面や周囲の運動器組織を評価できることから超音波検査でも検査が行われています。ただし、超音波検査は骨表面の骨膜の評価はできますが、骨の内部の骨髄の評価は困難ですので注意が必要です。

シンスプリントの治療

適切な休息(安静)、アイシング、圧迫、挙上などの保存的治療が基本となりますが、症状が重度の場合には物理療法や手術が必要になることもあります。
適切な治療を選択するためにも画像診断でシンスプリントの進行度を判断する必要があります。

シンスプリントの特徴

脛骨の上3分の1または下3分の1部位に生じるものを疾走型と言われ、主にダッシュやランニングの反復動作行為により発症すると言われており、中3分の1で生じるものを跳躍型と呼びジャンプ動作が原因となると言われています。競技や動作によって好発する部位が異なることが特徴としてあげられます。

症例

15歳の女性の部活動で陸上をやられている方で左のすねあたりの痛みが出現したため、受診された方です。

始めに超音波検査を依頼されました。

こちらが超音波検査の画像です。

両側の疼痛レベル(脛骨遠位1/3内側)の横断像です。何か所見を指摘できますでしょうか?

この黄色い点線がそれぞれの骨表になります。

左側の脛骨骨表の上に骨膜と思われる低エコー域の肥厚(青線部)を認めます。

左右比較しますと、左側が肥厚していることがわかります。

こちらは脛骨疼痛部の長軸像です。

青線部に骨膜と思われる低エコー域の肥厚があることがわかります。

ドプラ(血液の流れる方向やその速さを知ることができる検査法)にて血流を確認すると、

骨膜肥厚部に一致して血流を確認できました。(赤↑)

活動性のあるシンスプリントだと思われました。

また、もう一度長軸像を見ると、

骨表がやや凸凹していて骨表の不整像が気になります。

シンスプリントからの疲労骨折の可能性が考えられました。

シンスプリントの場合は基本安静ですが、運動は可能(運動後のアイシングや非ステロイド抗炎症剤の服用)です。

疲労骨折を伴っている場合は運動の休止が必要になり、治療として運動の可否の違いがあります。

スポーツをされている方は特に重要なところだと思います。

しかし、超音波検査では疲労骨折の可能性は指摘できても有無の判断はできません。

そこでMRI検査が追加になりました。

下腿のMRI検査画像です。STIRの冠状断と横断面です。

冠状面は両足を撮影しています。健側(右側)と比較するとわかりやすいと思います。横断像は疼痛部(左脛骨遠位1/3レベル)だけを拡大しています。

冠状断を見ると左の脛骨の骨髄浮腫と周囲皮下組織の浮腫を認めます。(左画像↑)

横断像を見ると脛骨の骨髄浮腫があるのがわかります。また、本来なら観察することが困難な骨膜が等信号に肥厚しているのがわかります(右画像↑)。
左脛骨前方内側の骨膜に浮腫様の肥厚と左脛骨骨幹部骨髄浮腫をこの画像から指摘することができ、シンスプリントおよびそれによる疲労骨折の合併とわかり、治療として運動休止となりました。

以上がシンスプリントについてのお話でした。シンスプリントは、適切な診断と治療によって管理することが可能です。
治療をせずにそのまま運動を続けると疲労骨折を引き起こすことがあります。疲労骨折を起こすと治療が長引くことがあります。そのため、疲労骨折を伴う前に治療するためにも、痛みや不快感を感じた場合には、早めに画像診断を受けて早期診断・早期治療することが重要になります。