75%はCTでわからない?!「腎盂腎炎」

皆さんこんにちは。ラジエーションジャーナル編集部の林です。

先日、モノマネタレントの山本高広さんが「左結石性腎盂腎炎」で緊急入院&手術をしたと報道がありましたね。現在は退院され回復に向かっているとのことですが、治療開始が半日でも遅れていたら危険な状態であったとのことで本当に大事なくて良かったです。

では、腎盂腎炎とはどんな病気で画像診断ではどのように評価できるのか、紹介します。

腎盂腎炎(pyelonephritis)とは

腎盂・腎杯・尿管に及んだ急性細菌感染症であり、上行性、血行性、リンパ行性の感染経路があります。原因菌の約9割が大腸菌です。その他、プロテウス菌、緑膿菌、クレブシエラ菌などがあります。尿路基礎疾患(尿路結石、膀胱尿管逆流、水腎症、神経因性膀胱、尿管奇形、膀胱留置カテーテルなど)がある複雑性腎盂腎炎と、それらのない単純性腎盂腎炎に大別されます。比較的若年の女性に多いと言われ、糖尿病や妊娠が誘因となることがあり、増悪するとすぐに敗血症性ショック、DIC、ARDSとなるため迅速に診断、治療する必要があります。

症状

発熱、悪寒、側腹部の痛み、吐気、嘔吐など。

約3割に頻尿、排尿障害などの下部尿路の症状が、また約8割で膀胱炎症状が生じます。

悪寒、振戦あるなら敗血症になっていると考えられます。

検査

血液検査でCRP陽性、血沈亢進、白血球増多、尿検査で細菌および白血球の存在を確認。

その他、尿培養や腹部レントゲン撮影、腹部エコー、腹部CTなど

画像診断

・CT

腎の腫大、腎周囲腔の脂肪組織に策状の濃度上昇を認める。また、造影にて腎皮質相での皮質造影効果不良による皮髄境界不明瞭化、腎実質相〜排泄相での楔状・線状の造影効果が不良所見です。ただし、約75%で有意所見が得られないと言われています。なので、CTで腎盂腎炎を疑う所見がないからと言って腎盂腎炎を否定はできない。症状や検体検査などの所見が診断には欠かせないのです。

症例

90歳代女性 突然の発熱、下痢・嘔吐あり

右腎実質の腫大、また腎下極にて濃染不良域を認める

・MRI

拡散強調画像(DWI)は腫瘍、膿瘍をはじめとした細胞性浮腫が存在する組織における検出能を有します。T1 強調画像、T2 強調画像のみでの質的診断は難しいが、DWIで高信号、かつADC(apparent diffusion coefficient)mapで低信号の確認により、比較的簡易に検出可能と考える。また腎被膜に沿った液体貯留像もMRIでは確認が容易です。

右腎の多数カ所に拡散強調画像で高信号、ADCmapで低信号化。

いかがでしたでしょうか。

腎盂腎炎の画像診断はかなり難しいのが現状です。腹部臓器なので造影CTにて評価することが多いと思います。その際、腎に造濃染不良域を認めても腎盂腎炎と確定診断はできず、必ず腎梗塞や腎腫瘍などの鑑別を考えなくてはいけません。上記症例のように当院でも過去にMRI-DWIで評価した経験もありますが、やはり血液や尿検査、または臨床所見での判断が必要です。

今回もご拝読いただき有難うございました。

参考文献

画像診断のまとめ 腎盂腎炎のCT画像診断、症状、原因、検査、治療

https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/5678