第8回ウェブラジエーション勉強会 ダイジェスト 第1弾 ―STAT画像報告 一般撮影編―

放射線技師の高石です。

第8回ウェブラジエーション勉強会へご参加いただきました皆さま、誠にありがとうございました。

今回は、勉強会の内容をダイジェスト版としてご紹介していきたいと思います。

第1弾は「STAT画像報告 一般撮影編」についてご紹介します。

放射線技師の皆様は、もしかしたら、日頃の業務で遭遇するかもしれない症例と思います。

ぜひ最後までご覧ください。

症例

60歳 女性 他院より紹介(膠原病内科)

主訴:関節痛

既往歴:全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus: SLE)、シェーグレン症候群、強皮症関連病態など

定期的にfollow up精査のため、胸部一般撮影を施行されている患者さんです。

この定期的(年1回)に撮影している胸部X線撮影の画像を見ていきます。

こちらが2023年の胸部一般撮影画像になります。

こちらが2024年の胸部一般撮影画像になります。

いずれも撮影肢位は立位P→Aになります。

これらの画像から何か気づいたことはありますか?

比較していきます。

左の画像が2023年、右の画像が2024年の胸部一般撮影画像になります。
右の中肺野外側に陰影があり、1年後には増大していることがわかります。

2023年の胸部一般撮影の読影レポート

:右肩甲骨下角の写り込み

1年後の2024年の定期的な胸部一般撮影の読影レポート

:右中肺野外側の陰影が増大

このことから精査が必要となり胸部CTがオーダーされました。

その時のCT画像です。

肺野条件のCT画像
縦郭条件のCT画像
骨条件のCT画像
右の肋骨に腫瘤影を認めます。

こちらが胸部一般撮影画像で増大したい部位と考えられます。

その他にも所見がありますが、わかりますでしょうか?

左乳房に腫瘤影を認めます。

今回のCT検査は胸部のオーダーでした。

検査担当した技師もこれらの所見には気づいてはいたんですが、オーダー通りに胸部のみ撮影して検査を終えました。

しかし、放射線科医から胸部CTだけで終わるのではなく、腹部CTも追加撮影してほしいとご指摘いただきました。

今回の症例では、左乳房の原発性乳がんが疑われ、それからの右肋骨骨転位と考えられましたが、他にも原発の癌がある可能性があるので腹部単純CTも追加が必要だということです。

なかなか難しいと思いますが、今回の症例の場合は胸部単純CT後に放射線科医や主治医に画像を確認してもらい腹部CTも検討いただくようにするのが良かった症例になります。

放射線科医より:

この症例にはいくつか問題点があり、2023年の胸部単純写真写っている右肺野の陰影ですが、この部位には肩甲骨の下角が入ることがあり、今回の症例と同じような画像になることがあります。その時の読影レポートでもこの部位にはふれてはいるんですが、膠原病患者さんの定期的胸部撮影であったため、肩甲骨の下角が入り込んでいるのだろうと読影レポートを書きました。

しかし、これがそうではなかったということが1年後の胸部撮影とCTで分かり、すでに肋骨への骨転移がありました。

胸膜病変と思われた方もいらっしゃると思いますが、確かに胸膜病変でもこのように見えます。

今回は肋骨に骨転移があったのが肩甲骨下角や胸膜病変のように見えてきた症例で、このようなことがあるということを認識しておく必要があります。

今回の症例はおそらく1年前に乳がんがあり、それがすでに肋骨転移を起こしていた症例と考えられます。1年前、すでにステージ4と考えられ、それに気づくのに時間がかかってしまいました

これが肩甲骨下角が入り込んだ画像になります。

60歳女性 胸部単純画像 右肩甲骨下角の入り込み(→)の画像

肩甲骨下角が入り込むことによって今回の症例で肋骨転移があった部位と同じレベル(第6肋骨)に腫瘤影のように写り、あたかも胸膜病変のように見えることがあります。

今回の症例のように肩甲骨下角と同じレベルの肋骨に骨転位があれば厄介であり注意が必要だと今回の症例で学ばせていただきました。

しかし、どうでしょうか?先ほどの症例とくらべると判断に苦慮すると思います。

右:今回の症例 左:肩甲骨の入り込み

2023年の画像だけをみて、骨転位の疑いがあるのでCTで精査をお願いすればよかったのですが、はたして同じような症例があった時に指摘できるかというとなかなか難しいと感じました。

<放射線技師>

私たち撮影者からすると胸写の肩甲骨は意識して外すようにしているのですが、肩甲骨が多少入っていても再撮影することはないと思います。

今回の症例は肩甲骨をちゃんと外して撮影できていたら早期に発見できていたかもしれません。

改めて肩甲骨をはずす必要性を感じさせられた症例でした。

<読影医>

胸写をたくさん見ていると肩甲骨下角の入り込みは意外とあります。それが胸膜病変に類似の陰影になることが多く、特に肩甲骨下角のレベルにあります。

そういう意味では放射線技師さんの努力として肩甲骨を外すということは、非常に大事になってくるのだと改めて感じさせられました。

肩甲骨への意識の再チェック:

原則、胸写の撮影方法は立位PAである

 チェックポイント

  ・肺野をきらない

  ・最大吸気を促す

  ・肩甲骨を外す

肩甲骨を肺野から外す → 両上肢を内旋させる

だたし、安全性を考えると

 ・手すりをつかんでの撮影

 ・立位でなく、座位AP・臥位APへ撮影体位を変更

  →AP撮影では肩甲骨は外せない

われわれ放射線技師は肩甲骨をはずして撮影するようにトレーニングをしていると思います。しかし、肩甲骨が外れてないから再撮影になることはありますか?あまりないと思います。

しかし、今回は肩甲骨の陰影が誤診につながるという症例がありました。再び肩甲骨をしっかり外すという意識をもたないといけないと再確認させられた症例でした。

【新人放射線技師、医学生必見!】放射線技師による、レントゲンの撮りかた講座~胸部編(PART1)~