第8回ウェブラジエーション勉強会 ダイジェスト 第3弾 ―鼠経ヘルニアの撮影方法―
放射線技師の高石です。
第8回ウェブラジエーション勉強会へご参加いただきました皆さま、誠にありがとうございました。
今回は、勉強会の内容をダイジェスト版としてご紹介していきたいと思います。
第3弾は「鼠経ヘルニアの撮影方法」についてご紹介します。
放射線技師の皆様は、もしかしたら、日頃の業務で遭遇するかもしれない症例だと思います。
ぜひ最後までご覧ください。
症例
同じ患者さんにて同日に撮影した腹部単純CT画像、ほぼ同じスライスのものを2シリーズ横並びにした画像を提示します。
左右の違いが何かわかりますでしょうか。
左の画像は仰臥位、右の画像は腹臥位にて撮影しています。
仰臥位では鼠径ヘルニアははっきりしませんが、
腹臥位では、右側鼠径部は小腸が、左側鼠径部は膀胱が脱出しているのがはっきりと確認できます。
撮影体位
当院では専門外来として、鼠径ヘルニア外来があり、術前CTを撮影する際、腹臥位で撮影することがルーチンとなっていますが、今回の症例ではたまたま短期間のうちに腹臥位と仰臥位での撮影があったので比較提示することができた症例です。
鼠経ヘルニア
鼠径ヘルニアとは、鼠径部の筋膜の一部が弱くなり、腹膜がこれを押し上げて腹壁内に飛び出す疾患のことです。
この飛び出た部分の腹膜をヘルニア嚢といい、この中に脱出する臓器は小腸が最も多い。鼠径部のどの部位に発生するかによって、
・外鼠径ヘルニア(間接鼠径ヘルニア)
・内鼠径ヘルニア(直接鼠径ヘルニア)
・大腿ヘルニア
に種類が分けられます。
詳しくはこちらのHPにて解説sしています。ぜひ、ご覧ください。
鼠径ヘルニアの症状
立位時や腹圧がかかったとき、腹腔内臓器がヘルニア嚢中に脱出し、鼠径部に柔らかい腫れを感じます。
仰臥位になったり指で押さえると、通常は引っ込みます。ですので、腹臥位での撮影が望まれます。
脱出に伴う鼠径部の不快感や痛みを感じ、徐々に増悪することがあります。
腫れが急にかたくなり、指で押さえても引っ込まなくなることもあり、腸閉塞や腸管虚血の原因となり、その状態を『嵌頓』といい、緊急手術(場合によっては開腹手術や腸管切除)の適応となります。
鼠経ヘルニアのポイント
鼠経ヘルニアの術前検査は基本的に単純CTが施行され、造影CTは基本的に施行しません。
内鼠経ヘルニアでも外鼠経ヘルニアでも術式が変わることはありません。
内鼠経ヘルニアと外鼠経ヘルニアでは、嵌頓のリスクの違いがあり、内鼠経ヘルニアは嵌頓のリスクはないけど外鼠経ヘルニアでは嵌頓のリスクがあります。
鼠経ヘルニアの場合、仰臥位と腹臥位の2体位で撮影するのでなく腹臥位のみで良いです。
腹臥位での撮影の場合、いつもと画像が違うので読影が難しいと言われるが、大腿動静脈につながる下腹壁動静脈が内に行っているのか外に行っているのかの違いをみるとわかります。
冠状断・矢状断のMPRを作成するが、基本的に横断像で診断しています。
高齢の方で腹臥位になれない方は無理をしないで仰臥位で撮影を行います。
撮影範囲が広いので息止め時間が長くなり、腹圧をかけるという事より息止めは吸気が良いです。
特に畜尿の支持はなく撮影を行っています。
放射線診断専門医より
ヘルニア疑いで画像診断依頼がありますが、ほとんどの場合が仰臥位で撮影されています。
腹圧がかかっていない状態で撮影してもヘルニアは認めませんでの画像上はヘルニアを認めることができません。
腹臥位になり腹圧を高めることにより今回の症例のように画像上でヘルニアを容易に認めることができます。
以上、鼠径ヘルニアについてご紹介しました。他の施設で、「他にもこんな撮影方法があるよ!」などありましたら教えていただけると嬉しいです。ありがとうございました。