第8回ウェブラジエーション勉強会 ダイジェスト 第4弾 ―追加撮影の落とし穴―

放射線技師の高石です。

第8回ウェブラジエーション勉強会へご参加いただきました皆さま、誠にありがとうございました。

今回は、勉強会の内容をダイジェスト版としてご紹介していきたいと思います。

第4弾は「”追加撮影の落とし穴”」についてご紹介します。

放射線技師の皆様は、もしかしたら、日頃の業務で撮影中に気になる症例かと思います。
ぜひ最後までご覧ください。

症例

70歳代 女性

他院で頸動脈瘤を指摘されている方で、年一回に定期エコー検査施行されています。

当院で右TKA手術予定のためMRIにて、術前の頸部MRA検査になりました。

 既往歴:脂質異常症、逆流性食道炎、骨粗鬆症、緑内障、甲状腺腺腫 

-撮影内容-

タイム・オブ・フライト法 (time-of-flight, TOF)

血流を高信号に撮影する方法。主に血流や血管の走行・形態を観察。

BB法(Black-blood法)

血流を低信号に撮影する方法。

T1、T2の脂肪抑制併用で撮影。

主に頸動脈プラーク評価目的や血管壁の形態評価目的で撮影。

他院にて、頸部に動脈瘤が指摘されていましたが、今回のMRI撮影では動脈瘤が指摘できませんでした。

そこで、違う手法の撮影で頸動脈を観察するためPC法(Phase contrast)を追加撮影しました。※(他のシーケンスでも明らかに動脈瘤を否定するため)

③PC法(Phase contrast)

流速誘発位相シフトによって、流れている 血液 と静止組織を識別することで画像化する。

時系列で画像を並べています。

以上の撮影内容にて検査を終了しました。

放射線科医の読影レポートでは有意所見なしということでした。

しかし、

PC法では、動脈相にてTOF法では描出されなかった右の内頸静脈が描出されています。

撮影者や放射線科医は他のシーケンスと比べながらこれがアーチファクトというのがわかったのですが、主治医はこれを見て、頸部動静脈瘻疑いということで後日、頸部造影CTAが施行されました。

頸部造影CTA

頸部造影CTAでも明らかな所見は認めないということで手術となりました。

MRA法

TOF法:

スライス内もしくはslab内への未励起な血液の流入効果を利用した手法。

PC法:

傾斜磁場内を動いているスピンの位相がshiftすることを利用する手法。

今からでも大丈夫!!MRI入門Part5 頭部MRA「Phase Contrast Method」

Phase Contrast法

□ 血液の位相がshiftする事を利用。

□ 2組の傾斜磁場を各軸に印可し、 強度を調整。

□ データ間のサブトラクションにより血流情報を得る。

PC-MRAを使いこなすにはあらかじめ目的とする血管の最大流速を推定して、VENCを設定することが重要です。

VENCは対象血管の推定最大流速の25%増しに 設定する事が望ましいとされています。

脳脊髄液 :10 cm/sec

頭蓋内静脈:20 cm/sec 

頭蓋内動脈:80 cm/sec

内頸動脈 :100 cm/sec 

ex.対象血管が最大100cm/secで流れているとすると、 VENC=125cm/secと設定すると効率が良いです。

今回の症例では右の内頸静脈の流速が動脈並みに早かったのでPC法にて出てきたと考えられます。

追加撮影で誤診を招く恐れ。。。

今までのウェブラジでは追加撮影を促してきましたが、今回のように追加撮影により誤診を招く恐れがあります。

放射線技師や放射線科医であればアーチファクトと判断できたのですが、主治医からするといつも見慣れない画像があり、追加撮影されているのであれば所見があるから撮影されたものと捉えられがちです。

良かれと思った追加の撮影シーケンスが過剰?な検査招く可能性があります。

追加撮影したから画像をサーバーに転送するのではなく、追加撮影するにしても誤解を招くような画像(アーチファクトなどで)であれば画像を転送しないようにした方が良いのかもしれません。

放射線科医より

今回の症例では読影所見を主治医が確認せず、主治医が画像のみをみて頸部動静脈瘻疑いと考え、造影CTAが施行されましたが、まず造影CTAを行う前に放射線科医や放射線技師に一度相談してほしかった症例です。

相談してもらえたら「アーチファクト」と伝えられましたし、造影CTAを施行されることはなかったと思います。主治医とのコミュニケーション不足がまず問題だったのかと思います。

しかし、私たちも読影をする際に追加撮影されているならばそこに何か所見があるため、技師さんが所見に気付いて追加撮影されているという風に思い画像をみます。そういった意味では紛らわしい画像(アーチファクトなどで)は転送しないのがいいと感じました。

以上、追加撮影の落とし穴についての紹介でした。

いかがだったでしょうか。4回に渡り、第8回ウェブラジエーション勉強会のダイジェスト版をお送りいたしました。また、来年度に開催する予定ですので、多くのご参加お待ちしております。

ありがとうございました。