磁気共鳴医学会 〜新しい動き・MRIカード非保有者の検査対応〜
ラジエーションジャーナル編集部の林です。
磁気共鳴医学会シリーズの第2回目のテーマは、「MRIカード非保有者の検査対応」についてご紹介したいと思います。
今年2024年1月。心臓植込みデバイス患者のMRI検査に対する3学会(日本医学放射線学会、日本不整脈心電学会、日本磁気共鳴医学会)合同ステートメント改訂が行われました。
この改訂で一番インパクトがあった内容が、MRI非対応の心臓植込みデバイスの患者(MRIカード非保有者)のMRI検査の施設基準また実施条件が掲示されたことです。
以下に新設された施設基準・実施条件を掲載します。
表1 MRIカード非保有者のMRI検査の新たな施設基準(2024年1月新設)
- MRIカード保有者のMRI検査の施設基準および実施条件を全て満たしていること。
- 放射線診断専門医、不整脈専門医、並びに磁気共鳴専門技術者がそれぞれ常勤していること。
- MRI検査室の近接した部屋に、体外式除細動器と(一時)経皮ペーシングを備え、救急蘇生に対応できる体制が整っていること。
- MRI検査依頼医師と不整脈専門医によるリスクの説明が行われ、文書による患者同意が取得されていること。
- MRI対応心臓植込みデバイス新規植込み後6週未満の患者、およびデバイス本体はMRI対応であるがMRI非対応リード(legacy lead)患者、遺残リードを有する患者、等のハイリスク者のMRI検査については、MRI検査時に循環器医師の立合いが求められる。
- MRI安全管理のための登録システムに登録すること。
表2 MRIカード非保有者のMRI検査の新たな実施条件(2024年1月新設)
- MRIカード非保有者のデバイス本体は、MRI対応機種であること。
- MRI検査時には、撮像前から終了後まで心電図あるいはパルスオキシメーターによるモニター管理を行う。
- MRI検査時には、体外ペーシング可能で心電図モニター付き除細動器、プログラマーおよび緊急事態に対応できる準備が必要である。
- MRIカード非保有者のMRI検査を行う施設では、救急対応が可能なスタッフの下で、院内ワークフローおよび院内プロトコールに順守してMRI検査を施行する。
- 心臓植込みデバイス患者のMRI撮像前後で、ペーシング関値・心内電位波高値・リード抵抗などのパラメータを測定し、異常がないことを確認する。
- ペースメーカ依存または自己脈のない患者のMRI検査では、緊急一時体外式ペーシングの準備が必要である。
- 心臓植込みデバイス患者においては、心拍応答機能などの付加機能をオフにする必要がある。また、同様にICD患者においては、MRI撮像前に頻脈検出・治療機能をオフにする必要がある。
- MRI撮像を行う場合には、プログラム操作が可能なスタッフが撮像中もMRI室で立ち会う必要がある。
実際に、MRI非対応心臓デバイスの患者を誤って通常検査対応してしまったケースで、検査後異常を認めなかった報告が過去に多くあっているようです。
通常のMRIカード保有者のMRI検査に比べ、検査のリスクが高まることのみならず撮像中の安全性のリスクも高まることが想定されます。
従って、MRI検査を受けMRI画像で診断をつけるというベネフィットが明らかにリスクを上回ると考えられる場合に限って行われないといけません。
明らかな安全のエビデンスはない中でのMRI非対応デバイス患者のガイドライン新設報告でしたが、上記施設基準・実施条件のようになかなか厳しい条件で整った施設環境下でないと検査できないのが現状です。
ただ、体内デバイス患者の検査対応について可用範囲が広がったという大きな一歩であることには間違いないですね。
次回もお楽しみに。
※引用文献
・MRI検査の安全にかかわる情報発信応答基地 MRI SAFETY FORUM