磁気共鳴医学会 〜外履きには砂鉄がついている!?〜

ラジエーションジャーナル編集部の林です。

磁気共鳴医学会シリーズ第3回目は、外履きによりMRI検査室に持ち込まれる砂鉄成分がガントリに吸着しているのかの調査報告についてです。今回、「安全」をテーマにしたセッションの中で発表された1演題をご紹介したいと思います。

金属による画質への影響

MRIの画像において、検査室外から持ち込まれた砂鉄などの小さな金属が、ガントリ(MRI装置のトンネル)内に付着すると画質に影響を及ぼすと考えられます。発表された先生の施設でもそうですが、当院でも各MRI室に専用の待合室・更衣室はなく他部署と共同使用となっているためMRI検査入室前はいろんな患者さんなどが行き来する環境です。

スリッパ等に履き替えてMRI検査室への入室は、歩行中の転倒や感染対策の観点より外履き靴のままで入室しているのが現実です。また、MRI検査室は常時磁場が発生しているため清掃員さんたちの毎日の清掃も対応できず他の検査室と違って掃除が行き届かないところもあると考えます。

当院のMRI装置

今回の発表では、画像にアーチファクトを及ぼす金属がどの程度ついているのか、プラスチック粘着シートを利用してガントリについている付着物質を採取。そのシートをファントムにのせ、実際に撮像し画像の信号が30%以上低下した信号欠損部のPixel数を測定しています。

【結果】

・1.5T装置よりも3.0T装置の方が多く金属が吸着していた

・ガントリ下部と中央部に付着物が多い傾向があった

・患者の昇降方向による差異は認められない

とのことでした。

毎日床をウェットシートで清掃を行なっている施設での発表でしたが、それでも画像に影響が出る細かな金属片が付着していることがわかりました。

今回のような「小さな金属のガントリへの付着」で類似するのが増毛パウダー白髪染めスプレーなどです。これらは金属成分が含まれている可能性があり、装置への吸着や画像への影響、また発熱の恐れがあると学会などで報告があります。これらはよく耳にするのですが、外履きからの金属片の報告は初めてですね。

歩行困難な方に靴を履き替えてスリッパでMRI検査室に入室をお願いすることは考えにくいですが、なるべく外履き靴のままで入室はご遠慮いただくこと、また検査室の清掃などのワークフローも大事だなと考えさせられました。

次回もお楽しみに。