造影CT検査について
皆さん、「造影CT検査」を受けたことはありますか?
造影CT検査とは、通常のCTよりも体内の詳細な画像を得るために行われる重要な診断手段の1つです。この検査では、特殊な薬剤である造影剤を使用して、体内の血管や臓器を鮮明に映し出します。
しかし、造影CTを施行するにも造影剤と言われる薬剤を体内に投与する必要があり、造影剤を投入する点滴が必要ですし、様々な準備が必要です。
造影CT検査を行う場合、その準備は患者さんにとっても撮影者にとっても、正確で安全な検査を施行するためにも非常に重要になります。
今回は造影CTを施行する前の準備について、私が勤めている病院で行っている手順をご紹介します。
造影CT検査前の準備
1. 医師からの説明
検査の流れ、造影剤の使用、検査中に感じる可能性のある感覚などについての説明を受けます。また、アレルギー歴や既往歴についての確認が行われます。ヨードアレルギーやその他のアレルギーがないか確認します(アレルギーにより副作用が出る可能性があります)。
検査の同意書と問診票を記入していただきます。
2. 絶食
腹部の検査の場合は検査の3〜4時間前から絶食が求められます。腹部の臓器をきれいに撮影するために重要です。食事をしていると、胃や小腸に食べ物が残り、正確な診断が難しくなります。また、造影剤の副作用で嘔吐のリスクがあるため、腹部の検査でなくても絶食対応が一般的です。
3. 水分摂取
検査当日は水分を多めにとるようにします。 造影検査前に水分補給をすることで、造影剤の副作用の発現率が減少すると言われています。
4. 糖尿病有無についての確認事項
絶食が血糖値に影響を与えるため、食事やインスリン、経口糖尿病薬の調整が必要になることがあります。
特に「身体の代謝(糖利用)を上げて血糖値を下げる作用」のあるメトホルミンとよばれる薬を服用されている方は休薬が必要になります。何故メトホルミン服用時に造影剤を使うことがダメなのかというと、
『造影剤を使用することで、メトホルミンの乳酸アシドーシスのリスクが上がってしまう』
という理由があります。
メトホルミンも造影剤も『腎臓』で代謝、排泄されるお薬です。
その為、造影剤を使うと一時的にメトホルミンの血中濃度が上がってしまい、通常よりも多いメトホルミンを服用したことと同じになり、乳酸アシドーシスになりやすくなってしまうからです。(乳酸が増えすぎて身体が酸性に傾きすぎてしまう症状を『乳酸アシドーシス』といいます)
メトホルミンを休薬してから24時間以上経過していれば、ヨード造影剤を使用しても問題はないとされており、検査後のメトホルミンの再開に関しては、ヨード造影剤投与後48時間以上経過した後となっています。
5.血圧脈拍測定
検査前の状態での血圧・脈拍の確認を行います。また、心臓冠状動脈の造影CT検査の場合は血管確保する前に血圧と脈拍を測定し、収縮期血圧が110以上に脈拍65以上であれは心臓の動きを落ち着かせるためロプレソール1錠服用してもらいます。
6.更衣
検査着へ着替えていただきます。血管を確保している部位が見えやすい検査着がいいです。
7.血管確保
右の前腕(肘関節に近い部位)に20Gの静脈留置針サーフローにて血管確保を行います。(血管確保困難な場合は主治医と放射線科医と検討し正中もしくは22Gを検討してもらいます。私が勤めている病院では造影剤を入れる速さが1秒間に3.0ml以上であれば20Gをお願いしています。このように検査内容によっては22Gで良い場合もあります。)
また、できれば同側の同じ血管に2回以上の穿刺をしないようにします(部位ではなく血管ということに注意。末梢でも近位でも同じ血管に穿刺しているなら2回穿刺したことになります。特に近位側に穿刺した後、同じ血管で末梢側でルート確保し造影検査を行った場合、はじめに穿刺した近位側の血管から造影剤が漏れる可能性があります)。
生食500mlと耐圧チューブ(造影剤を一気に投与するため圧に耐えれるチューブを使用します)と三方活栓にて血管確保(100ml/h)。この時、血管確保しているルートと造影剤のルートが直線になるように生食は血管確保のルートの直角方向に接続します。
8.造影剤検査
検査台に横になり、腕の静脈から造影剤を注入します。造影剤は粘調度がある薬なので温めて粘調度を下げて使用します。造影剤が体内に広がると、温まった造影剤の影響で温感や違和感を感じることがあります。気分が悪くなった時はすぐに検査スタッフや看護師に伝えるようにお願いします。
心臓冠状動脈の造影CT検査の場合は検査直前にニトロペン1T舌下します。(ミリスロールテープ・フランドールテープ貼付の場合は不要)
9. 検査後の安静
撮影後は安静にし、異常がなければ通常の生活に戻ります。
点滴終了まで安静にして休んでいただきます。(造影剤を体外へ排出するために、水分を十分いとってもらうため)
検査後、排尿と健康状態(血圧・脈拍)を確認します。
アレルギー反応(かゆみ・発疹・吐き気など)がないか確認します。
造影剤の副作用が遅延的に出る場合があることを説明し、帰宅後に異常があれば連絡していただくように伝えます。
異常がなければ検査終了・帰宅となります。
以上が造影CT検査の流れになります。確認事項や処置がたくさんありますね。
造影CT検査は、癌の診断やステージング、血管の異常や内臓の詳細な評価に特に有用です。
造影剤によって腫瘍と正常組織のコントラストが強調されるため、小さな腫瘍でも発見しやすくなります。また、動脈瘤や動脈硬化、血栓症などの血管疾患の評価にも役立ちます。
しかしながら、造影検査は侵襲的な検査になります。
検査前の準備だけでなく検査後の処置もしっかり行うことで、安全で正確な診断・検査が提供できます。
造影CT検査を施行していない施設または始めようとしている方の参考になればと思います。