磁気共鳴医学会 〜腫瘍抽出を実現”BD Score”の進歩〜

ラジエーションジャーナル編集部、診療放射線技師の林です。

磁気共鳴医学会シリーズ最終テーマは、「主要抽出を実現”BD Score”の進歩」についてご紹介したいと思います。

数年前から販売され話題に取り上げられるMRI拡散強調画像定量化ソフトウェア”BD Score”。拡散強調画像(DWI)から腫瘍部分(高信号部分)を抽出し、体積とADC値の統計解析を行い、腫瘍部分を定量化することで治療効果の判定に役立ちます。

DWIの定量評価

DWIの高信号領域を自動で抽出し体積とADC値を評価可能。上記画像は体幹部DWIBS検査の経過像。腫瘍体積:22.8ml→144.6ml、ADC値:0.73→0.61と数値またカラーマップ像で変化が分かる。これまでの「見た目」での判断から「数値で評価」が可能。

BD Scoreについて:3つの特徴


①がん診療において診断・治療効果判定・経過観察

放射線治療における照射後のDWIにおける高信号領域の体積の減少及びADCの増加を測定することが可能です。また、ADC値がカラー表示されることで明確になり、がん診療において診断・治療効果判定・経過観察等の際に役立つ。ADC統計解析では平均値や中央値に加え、ピーク値(最頻度値)、尖度、歪度、情報量(エントロピー)を提示します。全ピクセルのADC値をヒストグラムで表示。またCSVファイルを保存することで、過去データと比較することが可能となる。

放射線治療効果判定3ヶ月経過画像(BD Score画像とADC値のヒストグラム表)

②ADC値がカラー表示で視覚評価が容易患者

普段のDWI/ADCmapのような白黒画像でなく、ADC値が色付けされているため視覚評価が容易になる。また患者に経過を説明する際、がん細胞の活動状況や転移を視覚的に説明しやすい。

③PET検査の代用

PETでは患者にとって費用面などで負担が生じるが、MRIでは薬剤の使用なくまた放射線による被ばくもないためより患者の負担は大幅に軽減できる。MRIのDWI画像を使うBDスコアはより視覚評価を容易にするため、PET検査を必要としない放射線治療効果判定の経過観察などが可能となると考える。

BD Scoreの進化:In phase – Out phase画像を利用した赤色髄マップ機能

近年、脊髄置換(赤色髄)と悪性腫瘍の鑑別で多く論文などで取り上げられている撮像シーケンスIn phase – Out phase。今回の学会では、新機能として”赤色髄マップ”を開発したと報告があった(2024年1月)。この機能は、In PhaseとOut Phaseを用いてBD Scoreの高信号領域から、脂肪抑制効果の有無を判定し色分け、腫瘍ボリュームから除外できる。​これによって精度の高い画像判定や診断医の読影労力削減が期待できる。

In phase画像                Out phase画像

実際の臨床現場で赤色髄と悪性腫瘍との鑑別で苦労する場面は多く存在します。この際、当院でもIn-Out Phase画像を追加撮像するのですが、In-Outの信号変化の鑑別にも悩むシーンも多く存在し、追加撮像することでまた鑑別で苦労する場面も実際に遭遇しています。

赤色髄マップはそんな悩ましい画像診断の現場の負担を軽くできる可能性があると考え今回紹介させていただきました。

今年も4つのシリーズに分けて磁気共鳴医学会の報告をさせていただきました。

いかがだったでしょうか。

今回もこのような記事が皆さんの提供する検査に役立つことを祈っております。


今後も学会や研究会などの有益な情報を随時ご紹介したいと思いますので、お楽しみに。

参考資料、引用

拡散強調MRI定量解析ソフト BD Score; https://www.pixspace.co.jp/products/bd-score

BDスコア(PixSpace); https://www.fujidenolo.co.jp/product/bd-score/

J・Trustオンラインサイト MRI拡散強調画像定量化ソフトウェア「BD Score」; https://masitito.com/mri_bdscore/