小児股関節”生殖腺シールド”についての動向


記事の監修医師
【略歴】
熊本大学医学部卒業
【資格/役職】
放射線診断専門医 医学博士
株式会社ワイズ・リーディング 代表取締役兼CEO
医療法人社団 寿量会 熊本機能病院 画像診断センター長
熊本大学医学部 臨床教授
こんにちは。ラジエーションジャーナル編集部、診療放射線技師の林です。
2025年に発行されたJART(日本診療放射線技師会誌)に掲載の「小児股関節生殖腺シールドの廃止に向けて[前編]」についてお知らせしたいと思います。
これは去年開催された第1回日本放射線医療技術学術大会の学術企画18のシンポジウムの内容報告になっております。
小児の股関節撮影では生殖腺シールドをこれまで長く使われてきましたが、
女児:Y軟骨に遮蔽具が重なるリスクが高い、卵巣の位置が事前に推定することが困難である
男児:精巣の遮蔽は比較的容易だが停留精巣を羅患している場合は正確な遮蔽は難しい
という問題があります。
生殖腺シールドについては1950年代から推奨され、その背景としては遺伝性(的)影響の可能性を最小限にするという報告があります。ただ以下の図、骨盤の前後方向の撮影における入社表面空気カーマの推移を示したものによると1896年から2018年までで線量は約400分の1に低減していることが示されています。このことから撮影線量自体が機器類の進歩によって時間経過とともに大幅に減ってきている現状です。

*JART(日本診療放射線技師会誌) January,2025より掲載
実際に生殖腺シールドの廃止を実現している施設があり、その施設からの報告では、撮影時シールドのズレによる再撮影は全再撮影数の約20%を占めており、なかなか被爆低減対応として難しい現状であったとのこと。その後、放射線科・整形外科・小児科・放射線技師とで協議に協議を重ね生殖腺シールドを廃止したとの報告がありました。
世界の動向として、2019年米国医学物理学会(AAPM)が患者の生殖腺と胎児の遮蔽具の使用に関して、患者の健康にほぼ、また全く利益をもたらさない、検査の有効性に悪影響を与える可能性があると発表。この後上記表明を、米国放射線科専門医会(ACR)、豪州医学物理協会(ACPSEM)、カナダ放射線科医協会(CAR)などが支持しているようです。
私の勤務する施設でも、生殖腺シールドを廃止することはそう簡単にはいかないでしょう。各施設の医師や技師の方々の考え方で、被ばく対策の運用は様々ではありますが、今後の一つの業務改善事項として捉える項目であるなと今回感じた次第です。
次回もお楽しみに。