【症例で学ぶ】内側上顆骨端症と内側側副靭帯裂離骨折の診かた

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記事の監修医師

中山 善晴

【略歴】
熊本大学医学部卒業

【資格/役職】
放射線診断専門医 医学博士
株式会社ワイズ・リーディング 代表取締役兼CEO
医療法人社団 寿量会 熊本機能病院 画像診断センター長
熊本大学医学部 臨床教授

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放射線技師として活動している高石です。

内側上顆骨端症や内側側副靭帯性裂離骨折というものをご存じでしょうか。

これは、”野球肘”と呼ばれる肘の内側の疾患で野球肘内側型と言われます。

野球肘内側型には他にも、内側側副靭帯損傷があります。

今回は内側上顆骨端症や内側側副靭帯性裂離骨折についてお話します。

以前、投稿した「大谷選手も二度受けた手術について」の記事はこちらをクリック!

内側上顆骨端症・内側側副靭帯性裂離骨折

肘の内側側副靭帯上腕骨付着部には骨端線というものが存在します。この骨端線というものは、骨の端にある成長軟骨と呼ばれる成長をつかさどる軟骨層で非常に柔らかい層になります。投球動作の繰り返しにより肘に外反力のストレスがかかり、軟骨層が引っ張られ剥離をおこし骨端線を傷つけ、炎症を起こしてしまいます。この状態を「内側上顆骨端症」といい、内側側副靭帯により内側上顆が強く引っ張られ、内側上顆の靭帯付着部が剥がれたものを内側側副靱帯裂離骨折といいます。野球少年に最も多い障害といわれています。

画像検査では、骨端線や靱帯付着部の観察をしていきます。

治療選択

4週間程度の安静がを行い、骨融合が認められなかった場合や陳旧例の場合は靭帯再建術となることがあります。適切な治療のためにも画像検査にて細かく観察が必要です。

画像検査でのポイント

レントゲンやCTで、内側上顆骨端線の開大や剥離がないかの観察をしていきます。

MRIでは、剥離や骨端線の開大、レントゲンやCTでわかりにくい損傷をみるために骨髄浮腫の有無を観察していくことがポイントとなります。

症例

年齢:16歳 性別:M スポーツ:野球(投手:ピッチャー)
主訴:右肘痛
現病歴:投球時に右ひじ内側の痛みが出現、伸展制限ありで外反ストレスにて疼痛あり

肘のMRI画像です。

左2つ:脂肪抑制併用のT2強調画像の冠状断、右:T2FFEの冠状断です。

異常所見は指摘できますでしょうか?

で骨端線の開大と骨端線をまたぐように骨髄浮腫を認めます。骨の剥離はなく骨端線の損傷と考えられ、内側上顆骨端症・内側側副靭帯性裂離骨折と判断されました。

治療として、この方はご本人の希望もありスプリント固定となりました。

以上になります。いかがでしたか?

野球肘と言っても中には内側型と外側型があり、それぞれ治療選択が変わってきます。

画像検査では、適切な治療選択ができるように細かいところも評価できるように撮影することが求められます。