磁気共鳴医学会 〜チョコレート染めTシャツは危険!!?〜


記事の監修医師
【略歴】
熊本大学医学部卒業
【資格/役職】
放射線診断専門医 医学博士
株式会社ワイズ・リーディング 代表取締役兼CEO
医療法人社団 寿量会 熊本機能病院 画像診断センター長
熊本大学医学部 臨床教授
ラジエーションジャーナル編集部の林です。
磁気共鳴医学会シリーズの第2回目は、ちょっと気になる発表を見つけましたのでご紹介します。
”衣類用媒染液”がMRI画像に与える影響
まず内容を聞いて、思わず「なるほど!」と唸ってしまいました。
MRI検査に影響を及ぼす衣類といえば、最近では通電素材が編み込まれた機能性インナーや、発熱繊維入りのウェアなどが話題になっています。実際、我々も検査前に「ヒート○ックは脱いでください」と注意することが多くなりました。
でも今回の発表は、そうした「電気系素材」ではなく、「染色のときに使う“媒染液”」に注目した研究です。しかもきっかけは、「チョコレート染めのTシャツを着た患者さんでアーチファクトが出て検査中断」、、、という実例。これは興味深いと思いました。

本研究では、鉄・銅・チタン・アルミの4種類の媒染液を使ってファントム実験を行い、MRI画像の影響を評価したそうです。結果としては、やはり鉄と銅が強烈にアーチファクトを出すとのこと。特にGRE法では局所的な信号欠損が顕著で、画像としてまともに使えないレベルです。
一方で、チタンやアルミではほとんど影響が見られなかったそうです。
これ、日常業務の中でも結構リアルな話ですよね。
「金属アクセサリーは外してください」とはよく言うけれど、まさかTシャツの染料成分まで気にする必要があるとは…。
特に鉄媒染は黒や緑系、銅媒染は青系の染色に使われるとのこと。
つまり、ちょっとおしゃれな“天然染めTシャツ”や“ハンドメイドの草木染め服”が要注意というわけです。
実際に患者さんが「今日はMRI検査だから金属がついてない格好で来ました!」とおっしゃることもありますが、この発表を聞くと、見た目が普通でも中身(金属成分)はわからないということを改めて感じます。
これからは問診や更衣の際に「染めものや天然素材の服は避けてください」と一言添えるのも大切かもしれません。
MRIのアーチファクトは、撮影部位や撮像シーケンスだけでなく、こうした“人間が着ているもの”にも大きく左右されます。今回の発表は、まさにその盲点を突いた素晴らしい研究だと思いました。
「衣類チェック」は地味だけど大事。
これからも、放射線技師のちょっとした気づきで“安全なMRI検査”を目指していきたいですね。
