画診共同の仕組みと診療報酬の算定方法|導入手順と注意点も紹介
医療機関どうしが協力し、CTやMRIなどの高額な画像診断装置を効率的に活用する仕組みとして注目されているのが「画診共同」です。
とくに、高度な医療機器を持たないクリニックや無床診療所にとって、画診共同はコストを抑えながら高度画像診断を提供できる実践的な手段となっています。
一方で、診療報酬の算定方法や契約上の取り扱いは複雑で、正確な理解が必要です。
本記事では、画診共同の基本的な仕組みや診療報酬上の位置づけ、導入までの流れ、注意すべきポイントまでをわかりやすく解説します。
画診共同とは
画診共同とは、CTやMRIなどの高度な画像診断機器を保有していないクリニックが、他の医療機関の設備を借りて検査や画像診断を行う仕組みです。
患者はより高度な検査を身近な医療機関で受けられるようになり、紹介元のクリニックは診療の幅を広げられる利点があります。
具体的には、提携先の病院で検査を実施し、その後の会計やレセプト請求(診療報酬請求)は紹介元のクリニックが行うという流れです。
一方で、検査を実施する病院側にも、空いている検査時間枠を有効活用できるというメリットがあります。
このように画診共同は、医療機関間の連携を通じて、設備の有効利用と、患者サービスの向上を同時に実現する仕組みといえます。
対象医療機関と活用シーン
画診共同は、主に中小規模のクリニックや無床診療所が、CTやMRIなどの高額機器を保有する中核病院と連携することで活用します。
とくに、整形外科・内科・脳神経外科・循環器科など、画像診断が多く用いられる診療科において導入が進んでいます。
画診共同の仕組みを活用することで、クリニックは自院で対応できなかった検査を患者に提供でき、病院側は検査枠の空き時間を収益化できる点が大きな利点です。
診療報酬上の位置付け
画診共同は、厚生労働省による「医療機関相互の共同利用」の一環として位置づけられています。
診療報酬上は、検査を依頼するクリニック(主治医)が算定主体となり、検査を実施する病院は設備提供に伴う民間精算を行う形です。
ただし、単なる「設備貸与」では診療報酬の請求はできず、あくまで正式な共同利用契約を結んだうえでの検査・読影連携である必要があります。
画診共同における診療報酬の算定
画診共同では、医療機関の連携形態によって診療報酬の算定方法が異なります。
「設備共同利用」「画診共同」「紹介診療」の3つのケースに分類され、それぞれ算定主体や契約形態、請求方法に違いがあります。
以下の表に、それぞれのケースをまとめました。
| ケース | 主な内容 | 算定主体 | 保険請求 | 契約の取り扱い |
| 設備共同利用 | 他院の機器を使用し撮影のみ行う | 依頼元クリニック | ○ | 民間精算(設備利用料) |
| 画診共同 | 撮影・読影を分担し連携実施 | 依頼元クリニック | ○ | 医療機関連携契約 |
| 紹介診療 | 紹介後、依頼先で検査から診療まで実施 | 依頼先病院 | ○ | 紹介契約(返書あり) |
画診共同はあくまで依頼元が算定主体となり、依頼先の病院が読影などをサポートする形が原則です。
制度を正しく理解して運用しなければ、誤算定や返戻につながる可能性もあるため、注意が必要です。
⚫︎関連記事:遠隔読影の施設基準とは?4つの画像診断管理加算の要件・点数も詳しく解説
AクリニックがB病院の設備を共同利用するケース
AクリニックがB病院のCTやMRIなどの設備を使用し、撮影のみを行うケースでは、「設備共同利用」として扱われます。
この場合、Aクリニックが診療報酬の算定主体となり、検査実施施設であるB病院には保険請求の権限がありません。
B病院は設備利用料として、民間契約に基づいてAクリニックから費用を受け取ります。
これはあくまで「設備の貸出し」であり、画診共同とは区別されます。
共同利用契約を結ばないまま機器を使用した場合、制度上の「共同利用」として認められない点に注意が必要です。
AクリニックとB病院が撮影・読影を共同で行うケース
AクリニックとB病院が撮影・読影を共同で行うケースは、もっとも一般的な画診共同のモデルです。
B病院が撮影と読影を行い、Aクリニックが主治医として結果説明を担当します。
AクリニックがB病院の施設基準に基づいて診療報酬を算定し、B病院は契約に基づき読影委託料を受け取ります。
たとえば、「CT撮影+画像診断管理加算」をAクリニック側が算定し、B病院には民間契約として読影料を支払う形です。
このように、検査・診断・説明がそれぞれの施設で分担されることが画診共同の特徴です。
制度を正しく運用すれば、患者にとっても効率的で質の高い医療提供が可能となります。
Aクリニックの紹介を受けたB病院が検査・読影・診療を行うケース
Aクリニックの紹介を受けたB病院が検査・読影・診療を行うケースの場合、Aクリニックから紹介された患者をB病院が一貫して検査・診療まで行う形になります。
算定主体はB病院となり、Aクリニックには「診療情報提供料(Ⅰ)」が発生することがあります。
つまり、この形は「画診共同」ではなく、実質的には「紹介診療」です。
依頼元と実施施設の役割が異なるため、レセプト請求の方法や契約内容も変わります。
画診共同の基本的な流れ
画診共同を運用する際の実務フローは、以下の6ステップで構成されます。
- 依頼・予約:Aクリニック(依頼元)がB病院(実施側)へ検査を依頼
- 撮影:B病院がCT・MRIなどの検査を実施
- 読影:B病院または専門医が読影し、レポートを作成
- レポート共有:読影レポートをAクリニックへ送信
- 診療・説明:Aクリニックが患者に検査結果を説明
- 診療報酬請求:Aクリニックが算定主体として保険請求
このように、依頼元が主治医として診療を継続しながら、実施施設の設備を有効活用するのが画診共同の特徴です。
画診共同のメリット
画診共同の導入には、依頼元・依頼先の双方にとって多くのメリットがあります。
依頼元クリニックにとっては、高価な画像診断装置を保有せずに、高度検査を実施できる点が大きなメリットです。
また、患者を他院へ紹介する手間を減らし、自院で診療の一貫性を保つことが可能です。
一方、依頼先の病院にとっては、検査機器の稼働率が向上し、設備投資の効率化や収益機会の拡大につながります。
さらに、医療資源を共有することで、地域全体の医療体制が強化され、包括的な患者管理の実現にもつながります。
画診共同を導入する際のステップ
画診共同を導入する際は、段階的に準備を進めることが重要です。
導入の流れは、大きく以下の4ステップに分けられます。
- 自院の検査・診療体制の整理
- 連携先医療機関の選定・合意形成
- 施設基準・契約・レセプト運用の整備
- 画診共同の運用開始
また、遠隔画像診断サービス Y’s REPORT CLOUDを活用することで、撮影・読影・レポート返却をクラウド上で完結でき、依頼元でも画像確認が可能になります。
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自院の検査・診療体制の整理
導入の第一歩は、自院の現状を正確に把握することです。
保有機器の有無、稼働率、患者数、スタッフ体制などを整理し、どの分野で外部連携が必要かを明確にします。
また、過去の検査依頼件数や、診断精度の課題を洗い出すことで、導入後に改善すべき指標が見えてきます。
このステップでは、「なぜ画診共同が必要なのか」という目的を明確にしておくことが、後のステップでの合意形成をスムーズに進める鍵となります。
連携先医療機関の選定・合意形成
次に行うのが、連携先となる医療機関の選定です。
選定時は、診療科構成、撮影・読影体制、IT連携の可否、地理的距離などを考慮して比較検討します。
また、連携先の選定後は、責任分担、費用精算、レポート返却のルールなどを明確化し、合意形成を図ることが必要です。
契約前に「誰が撮影し、誰が診療し、誰が請求するのか」を文書化しておくことで、後々のトラブルを防ぐことにつながります。
施設基準・契約・レセプト運用の整備
画診共同の運用においては、施設基準の届出や契約書の整備が欠かせません。
契約書には、算定主体、レポート返却責任者、読影体制、情報共有方法などを明記します。
また、レセプト記載のルールを事前に整理しておくことも重要です。
不備のある契約や届出は、返戻や監査対応のリスクを高めるため、実務面でも慎重な対応が求められます。
画診共同の運用開始
すべての準備が整ったら、いよいよ運用を開始します。
運用初期は、検査依頼の流れやレポート返却手順を確認し、定期的な症例レビューや業務改善を行いましょう。
また、運用ルールの共有や職員教育を通じて、トラブルの防止と品質維持に努めることが大切です。
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依頼元施設でも、実際のCTやMRI画像をクラウドシステムで確認できるため、より利便性の高い運用フローを構築可能です。
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⚫︎関連記事:遠隔画像診断システムは導入すべき?ベンダー選びから運用までの流れや費用は?
画診共同を利用するうえでの注意点
画診共同を安全に運用するためには、制度・契約・情報管理の3つの側面で注意が必要です。
まず、制度の面では算定要件の確認が必須です。
撮影のみでは算定できないケースもあり、算定主体・施設基準・読影医資格・レポート管理方法を事前に整理することが欠かせません。
次に、契約・責任範囲を明確化するうえで、誰が撮影・診療・請求を行うのかを明示するとともに、あらかじめレポート返却の期限や責任者を決めておきましょう。
また、画像やレポートを共有する際は、個人情報保護法や医療情報ガイドラインに基づき、通信暗号化やアクセス権限の管理を徹底ことも重要です。
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