MRI:1.5T装置と3.0装置の振り分け
医師・医学部生の皆様、こんにちは! 某病院にて放射線技師をしている林です。
このページでは、医師はもちろん、これから医師を目指す医学部生へ向けて有益な放射線専門技術の情報を発信していく会員向けページとなります。
放射線での診断は、所見を行う上でも非常に重要項目となり、もちろんそれ以外の診察に密接に関わり合うパートです。
皆様にとって価値ある情報をお伝えしていきたいと思いますので、よろしくお願いします。
さて、初回の記事は、MRIについてお届けしたいと思います。
MRIには、様々な磁場装置を持った装置が存在しています。
こちらの装置の違いについて、ご説明していきたいと思います。
私たちの勤務地でもある、熊本機能病院にはMRIは2台設置されており、
1.5T(テスラ)装置と3.0T(テスラ)装置の磁場強度の違う装置で運用しています。
実際どのようにして2台の装置の使い分けをしているのか、どのように考えて患者さんの振り分けをしているのかをまとめてみました。
装置の紹介
まず初めに、当院で使用している主な2種類の装置を用いてMRIについてご説明いたします。
1.5T装置
1.5T装置では、以下のような検査内容で使用することが多いです。
1.5T装置で撮影するケース
①前回施行したMRI検査が1.5T装置で撮影されている
;前回画像との比較で画像所見や診断が行われるため
②頭部検査の認知症検査:VSRAD※を施行する
;解析ソフトの推奨が1.5T装置であるため(3.0T装置でも可)
③steady stateシーケンスを主として撮影する検査
;3.0装置ではバンディングアーチファクトが顕著に出現するため
④心臓の冠動脈検査
;上記記載のsteady stateシーケンスを主として撮影するため
※VSRAD(ブイエスラド);Voxel-Based Specific Regional Analysis System for Atrophy Detection
:アルツハイマー型認知症の早期診断を支援するためのプログラム。解析するデータとしてMRI装置で撮影した脳の画像(T1強調画像)を使用する。
3.0T装置
3.0T装置で撮影するケース
①前回施行したMRI検査が3.0T装置で撮影されている:
前回画像との比較で画像所見や診断が行われるため
②検査目的に血管撮像MRAngiographyが主として用いられる場合:
MRAの血管描出能は1.5T<3.0T *磁場の違いによるMRA画像
③四肢の撮像:SNR(信号雑音比)が高いため
④腹部の撮像:SNR(信号雑音比)が高いため
⑤脊髄液検査MRmyelography:SNR(信号雑音比)が高いため
⑥拡散強調画像DWIシーケンスが重要な検査:
歪み低減などの様々な特殊技術を付加できるパラメータが使用できるため
⑦体幹部DWIBS※検査:広範囲で撮影できるコイルが使用できるため
⑧撮影する部位の周囲に金属がある場合:金属アーチファクトを低減してくれる撮像パラメータが使用できるため
⑨どちらの装置も空いている場合:画質がよりため診断能が高い、また保険点数が高いため
※DWIBS(ドゥイブス);Diffusion-weighted Whole body Imaging with Background body signal Suppression
:広範囲からがん、またはがんの転移などを検索する検査
磁場の違いによるMRA画像
この二つの画像は、MRA画像です。
こちらをご覧いただくと、3.0Tで撮影した画像の方がより細かい血管が描出されていることがわかると思います。
MRI装置の振り分け、当院の1.5T装置と3.0T装置の使用比率はおおよそ3:7ぐらいです。
ただし当院は、古い1.5T装置と最新機能が搭載された3.0T装置という環境のため、
一般的な1.5T装置・3.0T装置のメリット/デメリットが活かされていないのが現状ではありますが・・。
同スペックを搭載した2台の装置で運用する場合、3.0T装置で撮影するケース内の④〜⑧までは、1.5Tで撮影する機会が多いと考えていただくと良いと思います。
当院の違う磁場を持ったMRI装置の使い分けについてお分かりいただけましたでしょうか?
皆さんの在籍しているクリニックや病院でも装置のスペックは異なるかと思います。
こちらの記事が少しでもご参考になれば幸いです。
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