上腕や頚部の痛みの原因を探し出す

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症例提示や国家試験問題についての情報をお届けします。

今回は、上腕や頚部の痛みが原因で、診察を受ける若年の患者さんのMRI画像をお見せしながら、上腕や頚部の痛みの原因を突き止めていきましょう。

こちらのT2強調像の矢状断像では、脊髄内の広範な高信号域が一見して明らかです。
多発性硬化症や視神経脊髄炎による脱髄疾患としては、範囲が広く、病変の境界も明瞭です。
横断像で確認すると病変部は嚢胞状であり、脊髄空洞症と診断しました。
脊髄空洞症と診断した場合、背景にChiari奇形が存在していないか確認することが重要となります。
今回の画像をよく観察してみましょう。すると、小脳扁桃が正常よりも下垂し、大槽(小脳背側の脳脊髄液腔)は消失しているのがお分かりでしょうか?

これは、Chiari奇形1型を疑う所見です。
頭蓋頚椎移行部奇形を伴うこともあるとされていますが、本例では認めませんでした。
Chiari奇形は、日本全国での患者数が約3000人とかなり稀な疾患ですが、特徴的な画像所見を示し、画像が診断の重要なポイントとなります。

Chiari奇形は1型・2型と分かれており、医師国家試験でも頻出です。

Chiari 2型奇形は基本的に乳幼児期に発見されるため、成人で脊髄空洞症をみた場合は、まず Chiari 1型奇形から考えていくことになります。

Chiari 1型奇形 キーポイント

・成人で発見される脊髄空洞症

・小脳扁桃の下垂を伴う

・症状としては頚部や腕の痛みが多いが、特異的なものはない

・頭蓋頚椎移行部に奇形を伴うことがある

上腕や頚部の痛みはありふれた症状ですが、時にChiari奇形のような重大な疾患が潜んでいることがあります。稀な疾患ですが、的確な診断のために画像所見をよく理解しておくことが肝心です。

参考資料

第99回医師国家試験

https://www.mhlw.go.jp/topics/2005/10/tp1028-3/dl/isi99h-betu.pdf

難病情報センター 脊髄空洞症

https://www.nanbyou.or.jp/entry/283

次回は、鼠径部腫瘤(そけいぶしゅりゅう)?についてご紹介していきます。

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