鼠径部腫瘤(そけいぶしゅりゅう)とは?
こちらでは、医師・医学部生専用情報として症例提示や国家試験問題についての情報をお届けします。
症例提示や国家試験問題についての情報をお届けします。
今回は、CTで偶発的に発見されることの多い鼠径部腫瘤のCT画像をみながら鼠蹊部腫瘤について解説していきたいと思います。
スクリーニングで撮影されたCTで、偶発的に鼠径部に腫瘤を指摘されました。
形状は、いびつで辺縁は不整であり、内部の吸収値は、筋肉に比べると低いことがわかります。一見すると腫瘍のようにみえますが、これは、鼠径ヘルニアの術後にメッシュプラグを留置したことで生じた偽腫瘍性病変です。
英語圏では「Plugoma」といわれているようです。
(※-omaは腫瘍を示す接尾語です。例えば、ガーゼの体内遺残に伴う偽腫瘍はgauzeomaと呼ばれます)
このように、鼠径ヘルニアの術後かどうかわからない場合は、腫瘍や膿瘍との鑑別が必要になります。
局所の診察や既往歴の聴取により、術後の確認ができれば、MRIなどの不要な追加検査を避けることができます。
メッシュプラグの有無については、CT検査での指摘と臨床状況の確認が重要です。
メッシュプラグにも様々な形状があり、CTの見え方も一定ではありません。
メッシュプラグそのものは紡錘形(ぼうすいけい)のものが多いようですが、
CTでは紡錘形よりも楕円形のいびつな腫瘍として認められることが多い印象があります。
病理学的には、メッシュプラグとその周囲に生じた異物反応や肉芽腫性変化(にくがしゅせいへんか)が腫瘤状にみえているものです。また、感染の所見がなければ病的意義はありません。
肉芽腫性炎症は術後かなり長期にわたって持続し、FDG-PET/CTでは、ヘルニア術後10年以上経過しても集積がみられると報告されています。
もちろん画像のみからは悪性軟部腫瘍や感染症との鑑別は難しく、既往の確認が最も重要です。
参考資料:
https://www.info.pmda.go.jp/downfiles/md/PDF/780045/780045_16000BZY01128000_B_05_11.pdf
Bard メッシュプラグ 添付文書
https://tech.snmjournals.org/content/48/2/177
18F-FDG PET/CT Appearance of Plugoma
Khushboo Gupta, Rahul Jadhav and Sumeet Virmani
Journal of Nuclear Medicine Technology June 2020, 48 (2) 177-178;
今回は、鼠径部腫瘤について、画像を用いた症例でご紹介しました。
次回も医学的な観点から新たな画像症例を用いて様々なが所見をご紹介したいと思います。
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