坐骨大腿インピンジメントとは?

こちらでは、医師・医学部生専用情報として症例提示や国家試験問題についての情報をお届けします。

今回は、坐骨大腿インピンジメントについて、実際の画像を提示しながら疾患を紹介していきます。
症例は若年の女性で、右坐骨周囲の痛みを主訴にMRI(STIR像横断像)を撮影されました。

右坐骨結節の前方、大腿方形筋の一部がSTIR像で高信号を示しています。
深部に存在する筋であり、打撲などの外傷性変化は生じにくい部位です。

今回の患者さんはプロレベルのアスリートであり、ハードなトレーニングに関連して生じた坐骨大腿インピンジメント(ischiofemoral impingement ; IFI)と診断されました。

坐骨大腿インピンジメントは、 股関節の運動時に、大腿骨小転子と坐骨結節に大腿方形筋が挟まれることによって生じる筋損傷です。インピンジメントは『衝突』という意味で、この部位に限らず骨と骨がぶつかって痛みを起こす疾患で広く使われる言葉です。
症状としては殿部痛や鼠径部痛などがありますが非特異的で、臨床所見からの診断は難しいです。

画像が診断の決め手になりますが、MRIでも信号変化は淡く不明瞭なことが多く、疾患知名度の低さもあいまって、ややもすると見逃されがちな疾患です。

股関節に負担のかかるサッカーや陸上などのスポーツ選手でよくみられます。

男女いずれも起こりうる疾患ですが、特に女性に好発します。
特異的な治療法はなく、保存的加療が治療の柱となります。

外骨腫などの骨奇形や発育性股関節形成不全がある場合、それらに対する治療が行われますが、そういった症例は少ないです。

本症例は、保存的加療にて大腿方形筋の異常信号は消退し、症状も改善が得られました。

先ほども記載した通り、スポーツ選手やアスリートに多い疾患のため、早期診断と適切なトレーニング、リハビリテーションが重要です。

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