腸閉塞の意外な原因とは?
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症例提示や国家試験問題についての情報をお届けします。
今回は、腸閉塞のCT画像を提示します。
腸閉塞は、さまざまな原因で生じる疾患です。時に思わぬ物体が通過障害をきたすことがあります。
画像をもとに、閉塞の原因を解き明かしていきましょう。
腸閉塞とは、腸管内にある食物や便、消化液などの通過に問題をきたし、消化管が病的に拡張する疾患のことを言います。
この画像は、高齢の患者さんで腹痛や腹部膨満感、嘔吐を主訴に病院を受診されました。
CTを確認すると、小腸に高度の拡張と液体貯留を認め、腸閉塞の状態でした。
拡張した小腸を追跡していくと、小腸内部に大きな石灰化を認め、ここを閉塞機転とした腸閉塞が疑われました。
消化管内にこういった石灰化を認めた場合、鑑別は3つ挙げられます。
1 経口的に飲み込んだ異物
2 胃内で形成された胃石
3 胆嚢から落下した胆石
このうち、異物と胃石については画像上の鑑別は困難です。
異物誤飲の既往や、胃石の原因となるような特殊な食事摂取歴がないかを確認して診断します。
胆石の落下については、CTで胆嚢を確認することにより診断可能です。
本症例では以前にもCTが撮影されていたため、そちらも確認してみましょう。
数年前のCTでは、胆嚢内に大きな胆石を認めます。
この時点では胆嚢に壁肥厚はなく、胆嚢炎を疑う所見はありません。
今回のCTでは、胆嚢に全周性の高度壁肥厚がみられます。
慢性胆嚢炎を疑う所見ですが、それに加えて胆嚢内部の結石が消失しており、胆嚢内に空気が出現しています。
2つの所見をあわせると、「胆嚢十二指腸瘻形成に伴う胆石の消化管への落下」が疑われます。
最終的に、落下した胆石に伴う消化管通過障害(胆石イレウス)と診断しました。
なぜ、胆嚢内にある大きな結石が消化管内に移動するのでしょうか?
それには胆嚢十二指腸瘻の形成が重要な役割を果たしています。
通常、大きな胆石は総胆管を通過できないため、消化管内に移動することはありません。
稀なケースですが、慢性胆嚢炎に伴って、胆嚢壁と十二指腸壁が癒着することが時にあります。
癒着が生じた後も炎症が持続すると、胆嚢や十二指腸の壁が炎症によって破壊され、瘻孔化することがあります。これが胆嚢十二指腸瘻と呼ばれる状態で、胆嚢の内腔と消化管の内腔が直接交通するため、大きな胆石が消化管に落下する原因となります。
こうして落下した胆石は、小さなものであればそのまま便に混じって排泄されますが、大きなものは消化管を通過できず、腸閉塞の原因となります。
消化管内に結石が詰まってしまった場合には、一般に外科的加療が必要となります。そのため的確な診断が重要です。
胆石イレウスは以前は診断が難しい疾患とされていましたが、近年ではCTの画質向上と再構成画像の一般化に伴い、ほとんどの症例をCTで診断することが可能です。腸閉塞の所見を見つけた場合には、消化管だけではなく胆嚢・胆道系にも目を向ける習慣をつけておきましょう。
~Take home message~
消化管内に石灰化結節を認めたら、胆嚢消化管瘻がないかを確認。
Hepatobiliary & Pancreatic Diseases International
Volume 19, Issue 1, February 2020, Pages 36-40
Hepatobiliary & Pancreatic Diseases International
Biliary Cholecystoenteric fistula with and without gallstone ileus: A case series
Mauricio Gonzalez-Urquijo , Mario Rodarte-Shade , Gerardo Lozano-Balderas , Gerardo Gil-Galindo
今回は、腸閉塞の意外な原因について、画像を用いた症例でご紹介しました。
次回も医学的な観点から新たな画像症例を用いて様々な所見をご紹介したいと思います。
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