ぎっくり腰の画像診断について【放射線診断専門医が解説】
みなさん、こんにちは。
放射線診断専門医の坂田です。
今回は、「ぎっくり腰」の画像診断の所見についてご紹介します。
前回もお話しした通り、「ぎっくり腰」は、急に起こった腰痛を示す一般的な言葉です。実は、正式な医学用語ではありません。通常の医学用語では、急性腰痛症と呼ばれています。
医療機関でぎっくり腰(急性腰痛症)と診断された場合、CTやMRIなどの詳しい画像検査は通常必要ありません。
ぎっくり腰(急性腰痛症)は、原因が何であったとしても、自然治癒を期待できる疾患です。
画像検査を行わずとも治るので、それならば検査をしないほうが通院回数も抑えられ、費用面でもメリットがある。というわけです。
ただし、急性腰痛症は、あくまで他の病気を除外した後に診断する病名です。
急性腰痛症疑いで撮影されたMRIで、椎間板ヘルニアや椎体圧迫骨折など、治療が必要となる疾患がみつかることも稀ならずあります。そのため診察の上、症状から椎間板ヘルニアなど重篤な疾患の除外が必要と考えられる場合には、MRI等の画像検査が行われます。
ぎっくり腰(急性腰痛症)の原因は、画像検査ではわからない。といわれることが多いのですが、実はMRIで原因を特定できる事もしばしばあります。
具体的には、椎間板や椎体終板の異常所見が有名です。
2012年に韓国のグループから発見されている論文が有名なのでそちらを引用します。
重度の急性腰痛症の患者にMRIを撮影した際、急性腰痛症の患者では、そうでない患者と比べて、椎間板の変性と輪状断裂、椎体終板の異常信号が多いことがわかりました。
こちらの画像は、論文で提示されていた画像です。
椎体終板にT1強調像(左側画像A)では低信号、T2強調像(右側画像B)では高信号域がみられます。
Modic type 1(急性期の浮腫・炎症)を疑う所見で、腰痛の原因になり得ます。
実際に画像診断を行っていく上でも、急性腰痛症の患者において椎体終板に異常信号を認めることはしばしばあります。
下の画像は、急性腰痛症に対し撮影されたMRI画像です。
T2強調像でTh12/L1椎間板に変性を認めます。
L1椎体終板に陥凹変形があり、周囲にSTIR像で高信号域がみられます。
骨髄浮腫を伴った急性期Schmorl結節と診断しました。
症状の原因として疑わしい病変です。
Schmorl結節は椎間板が変性し、椎体の内部に突出したものです。椎間板ヘルニアとは異なり、神経根や馬尾を圧迫することはありません。そのため手術の必要はなく、保存的加療で症状の軽減が望めます。
本症例でもMRI撮影後、2週間ほどで症状は自然に軽快しました。
原因不明と言われがちなぎっくり腰(急性腰痛症)ですが、MRIで原因を特定できることも稀ならずあります。
主な目的は重篤な疾患の除外ではありますが、MRIも診断に有用です。
Ann Rehabil Med. 2012 Feb; 36(1): 47–54.
Magnetic Resonance Findings of Acute Severe Lower Back Pain
Seon-Yu Kim,
M.D. et.al.
いかがでしたでしょうか?
この様に、もしかすると他の疾患が隠れているかもしれませんので、腰が痛い場合は、受診をお勧めいたします。
では、次回もお楽しみに!