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アニサキス食中毒:海の恵みに潜む小さな脅威

皆さん、こんにちは。

放射線技師として活動している高石です。

海の幸を楽しむ日本の食文化は、世界中で愛されています。新鮮な刺身、寿司、そして美味しいサバの塩焼き…口にするだけで幸せな気分になりますよね。

しかし、この美味しい瞬間の裏で、私たちを待ち受けている小さな脅威があるのです。その名も「アニサキス」。。。

私は実家が海に囲まれた島国で、子供のころから釣りをしていました。いとこが漁師だったこともあり、実家では毎晩のように刺身が食卓に出ていました。

今でもよく実家へ帰っては釣りをするのですが、釣ってきた魚はもちろん自分でさばきます。

魚をさばいていると時々、細長い糸状の線虫と遭遇することがあります。寄生虫と呼ばれるものです。

寄生虫にはいろいろと種類があるのですが、中でもアニサキスと呼ばれる線虫は健康被害に影響するので注意が必要です。

また、芸能人の方が「アニサキス食中毒になった」と被害報告が報道番組で取り上げられ、その劇的な症状とショッキングな描写がメディアで大々的に報道されることもあり、皆さんの記憶の片隅にアニサキス食中毒という言葉があるのではないでしょうか。

今回はアニサキス食中毒と画像検査についてお話します。

アニサキスって何?

アニサキスは、海洋哺乳類や魚介類を宿主とする寄生虫(線虫)の一種です。サバやアジ、イカなど、私たちがよく食べる魚介類にも寄生しており、生で摂取すると、アニサキス症という食中毒を引き起こす可能性があります。

食中毒の症状は?

食後数時間で、激しい腹痛や嘔吐などの症状が現れることがあります。特に、胃壁や腸壁にアニサキスが突き刺さると、急性胃アニサキス症や急性腸アニサキス症といった症状が発生します。

最近のニュースでのアニサキス

最近では、福井県でサバずしを食べた30代の方が食中毒になり、胃からアニサキスが摘出された事件がありました。また、お笑いコンビNONSTYLEの井上裕介さんもアニサキスによる食中毒で療養し、「胃から釘をうたれる感じ…まさか自分がなるなんて」とコメントされました。

アニサキス食中毒の検査は?

アニサキス症の検査には、いくつかの方法があります。

<内視鏡検査>

胃アニサキス症の場合、胃カメラ(胃内視鏡)を使用して、胃壁に刺入しているアニサキスを直接視認し、摘除することができます。

小腸アニサキス症の場合、大腸内視鏡検査によって視認することが可能です。

<血液検査>

アニサキスに対する抗体を調べることで、アニサキス症かその他の病気かを判別することができます。特に、アニサキスの抗体に対して血液中に※抗原特異IgE抗体が検出される場合があります。

※IgE抗体:1型アレルギー反応を引き起こす免疫グロブリンです。特に特定のアレルゲン(ほこりやダニなど)に感作され反応するものを「特異的IgE抗体」といいます。

<画像検査>

アニサキスが小腸に到達している場合、内視鏡では確認が難しいため、CTや超音波による画像診断が行われます。

・CT検査は特に胃アニサキス症や消化管外アニサキス症が疑われる場合に有効です。内視鏡検査ではアニサキス幼虫の確認が難しいため、CT検査によって以下の情報から間接的にアニサキスの存在を疑うことができます。

アニサキス症のCT画像:胃の小彎側、粘膜下層を主体に著名な浮腫状の壁肥厚を認め、脂肪織濃度の上昇を伴っています。

アニサキス症のCT画像:胃の小彎側、粘膜下層を主体に著名な浮腫状の壁肥厚を認め、脂肪織濃度の上昇を伴っています。

<胃や腸のむくみや炎症の程度>

CT検査は、胃や腸の壁の肥厚や炎症を観察することで、アニサキスが食いついている可能性のある場所を推定するのに役立ちます。

<腸閉塞の診断>

腸アニサキス症では、腸閉塞を引き起こすことがあり、CT検査によってその有無を確認することができます。

<腸穿孔の有無>

まれにアニサキスが腸壁を突き破り、腸穿孔を引き起こすことがあります。CT検査は、このような重篤な状態を確認するのにも有効です。

CT検査はアニサキス虫体を直接見つけることはできませんが、消化管の状態を詳細に観察し、アニサキス症の診断に重要な手がかりを提供することができます。

・超音波検査:

超音波検査は特に、アニサキスが胃を通過して小腸に到達している場合や、内視鏡で観察できない場所に感染している疑いがある場合に行われます。

超音波検査は、以下のような状況で特に有効です。

食後6時間以内で胃カメラ検査(胃内視鏡検査)がまだ行えない場合。

内視鏡では観察困難な小腸の状態を観察するため。

小腸粘膜が腫れ上がっている状態を観察し、イレウス(腸閉塞)などの合併症の有無を確認するため。

小腸に特徴的な腫れや、アニサキスが侵入しようとした場所を中心に形成される肉芽腫を観察することができます。

超音波検査はこれらにより、アニサキス症の診断を補助することができます。

これらの検査方法により、アニサキス症の診断が行われ、適切な治療が施されます。

アニサキスの予防策はあるの?

もちろんあります!アニサキスは加熱処理や、零下20度以下での24時間以上の冷凍処理で死滅します。

また、アニサキスは魚の内臓に生息しており、魚が死ぬと魚の身の方に移動してきます。なので、できるだけ新鮮な魚を選び、内臓をすぐ取り除くと良いです。

また、薄切りにしてしっかり目視で確認すること、冷凍・加熱処理でアニサキスを死滅させる(ただしアニサキスアレルギーなど寄生虫体そのものにアレルギー体質がある場合は除く)と良いです。

これらの予防策を実施することで、アニサキスによる食中毒のリスクを大幅に減らすことができます。

一般的な料理で使う食酢、塩漬け、醤油やわさびを付けてもアニサキス幼虫は死滅しないため、注意が必要です。

いかがでしたか?

アニサキス食中毒の検査は、内視鏡検査による直接的な視認が最も確実な方法ですが、適切な治療選択のためにも場合によってはCTや超音波検査などの画像検査や血液検査が必要になることもあります。

アニサキスは、私たちの食生活に潜む小さな脅威ですが、適切な予防策を講じることで、安全に魚介類を楽しむことができます。

美味しい魚介類を食べるときは、アニサキスに気を付けて、安心して海の恵みを味わいましょう!