― 電子カルテ更新を終えて ―「事故を防ぐ!オーダーミスを生まない現場の工夫とRIS連携」

記事の監修医師
【略歴】
熊本大学医学部卒業
【資格/役職】
放射線診断専門医 医学博士
株式会社ワイズ・リーディング 代表取締役兼CEO
医療法人社団 寿量会 熊本機能病院 画像診断センター長
熊本大学医学部 臨床教授
ラジエーションジャーナル編集部の林です。
システム更新の初期段階において、現場のスタッフが最も神経をすり減らすのが「オーダーミス」のリスクです。画面が刷新され、操作手順がガラリと変わった直後は、どうしてもヒューマンエラーが起きる可能性が高くなります。いかにシステムが高度化しようとも、最終的な安全の砦となるのは現場のチェック体制と細やかな工夫にほかなりません。
特に頭を悩ませたのが、類似した検査名称の選択ミスや四肢検査の左右選択ミス、同姓同名の患者さんに対するオーダーミスです。新しい電子カルテでは入力フローも変わり、旧システムと同じ感覚でオーダー入力すると意図しない検査項目を拾ってしまうケースが散見されました。そこで私たちは、事故を未然に防ぐための第一歩として、入力時の表記ルールを徹底的に見直しました。具体的には、漢字表記のみならず「ひらがな表記」を併用した検索の定着(例えば、”右→みぎ”、”側面→そく面”)や、オーダー画面のマスター登録において紛らわしい名称のなかに注意喚起のコメントを強制表示(ポップアップ機能など)させる仕組みを構築しました。少しの手間を惜しむことが大事故につながるという共通認識を、部署全体で改めて引き締め直しました。

当院の電子カルテ・放射線部検査オーダー画面
さらに、電子カルテと放射線情報システム(RIS)との間で行われるデータ連携のトラブルシューティングも大きな課題でした。オーダーが発出された後、スムーズにRIS側へ情報が反映されなければ、撮影室での患者確認やプロトコルの選択に直接的な支障をきたします。導入直後は「オーダーは通っているはずなのに撮影コンソールに検査項目が落ちてこない」という患者情報の接続(MWM)不具合や、撮影条件未反映による手動設定の手間、医事課の会計システムへの連携ミスなどが発生しました。これに対しては、電子カルテベンダーだけでなくRISベンダーとの密な連携体制を敷き、どのデータの連携が不整合を起こしているのかをチェックしたり、放射線技師スタッフ間でも、外来受診票(または入院患者のリストバンド)だけに頼らず、必ずRIS側/撮影コンソール側の表示リストを目視でダブルチェックする運用ルールを徹底しました。
システムの自動化やベンダーのサポートに100%依存するのではなく、「自分たちの手でリスクの芽を摘む」というアナログな確認の積み重ねこそが、最大の安全装置となります。新しいシステムという荒波を乗りこなすためには、機械の便利さと人間の慎重な目をうまく噛み合わせるバランス感覚が不可欠だと痛感させられました。
最終回となる第3部では、このシステム更新の波のなかで直面した「増え続ける端末とPC環境の最適化」についてご紹介します。